球の表面に複数の円錐をその底面が接するように貼り付け,奥行き方向に回転させながら円錐のみを表示すると,球の3次元形状が知覚されるだけでなく,球内部があたかも透明な媒体によって満たされているかのように見えることがある.いくつかの研究(Nakayama,K.,et al.,1990他)で扱われるのは専ら平らな面に誘発される透明感知覚ばかりで,立体曲面における透明感知覚についてはほとんど議論されてこなかった.そこで本研究では,立体的透明感の生起要因を明らかにする目的で,円錐の個数と球サイズの関係を調べる実験を行った.すると,球の輪郭付近に充分な情報が与えられるとき,透明錯視が生じる事を示唆する結果が得られた.このことから,輪郭付近に出現する非対応領域(時系列画像間で一致しない部分)との関連について考察した.