抄録
私たちは周辺視からの視覚情報をもとに見ようとする物体を決め,そこに視線を向ける.過去の研究により提案されたsaliency map modelは視線誘導の指標を与えているが,注視の順序までを正しく予測していない.そこで,本研究では,視線を誘導するための視覚刺激の条件を明らかにするために,ディストラクターとターゲットに輝度コントラスト差を付け,初期視線を誘導するための閾値とターゲットを検出するための閾値を測定した.結果として,ターゲット検出閾値は61%輝度コントラストとなったが,初期の視線誘導についてはコントラスト増大により視線を誘導しやすくなるものの,本実験条件下で輝度コントラスト閾値を求めるのに十分な初期視線誘導は得られなかった.このことから初期の視線誘導にはターゲットの検出ができるコントラストだけでは不十分であることがわかった.