抄録
1986年から2010年の間に、大阪電気通信大学(寝屋川市)において連続的に測定されたKu帯およびKa帯各種衛星電波の測定データを用いて、降雨減衰量に対する時間遅延ダイバーシティ効果について検討を行った。Ku帯において時間率が0.01%以上の5〜10dB程度の減衰量では30〜60分の遅延時間で1桁程度の時間率改善効果が得られるのに対し、時間率%0.01以下の10dBを超える減衰量では5〜10分程度で同様の効果が示された、Ka帯では10dB以上の減衰量で同様の効果を得るためには30〜60分程度の遅延時間が必要とされる。同時に天気図等より得られた前線通過に伴う雨域移動速度から、時間遅延ダイバーシティはこの雨域移動距離に対応したサイトダイバーシティ効果のITU-R勧告値と等価的にほぼ一致することが分かり、30分の時間差が約20kmの距離に相当することが示された。また雨域の移動速度別では、時間遅延ダイバーシティ効果は雨域通過速度が速くなるほどその移動距離に応じで高くなることが、21年間にわたるKu帯とKa帯電波の長期観測統計データから明らかにされた。