抄録
カメラ(撮像素子)やディスプレイなどの画像システムの究極の目標は、「きれいな」映像表現であるといえ、従来の画像システムに関する技術は、高解像度化や高ダイナミックレンジ化などの進歩を遂げてきた。しかしこの映像の「きれいさ」とは、本来は「人間にとって」という形容詞がつくべきものであり、人間の視覚系の光学的・知覚的特性を考慮に入れた画像の評価手法に関する研究もあるが、高解像度化などの技術進歩がこれを本質的に改善できるかに関する検討は少ない。著者は、視覚系が画像中の段差に対して高い感度を持つ(副尺視力)点に着目し、画像中の斜め線等のエッジ部分に現れる階段(ジャギー)を原理的に解消するために、画像システムを構成する画素の配置そのものを正方格子状ではなく擬似的に不規則とする手法について提案・検討してきた。本稿では、それらの手法と評価について概観する。