抄録
よく知られているように,方程式x^2+1=0は実数では解をもたない.そこで,関係i^2+1=0を満たすような虚数単位iを含むように数の次元を1つ上げて,α+ibの形の複素数を得たのであるが,たとえば交流回路の複素インピーダンス計算を楽に行えることなど,"次元を上げると,こんなにいいことがある"のが示される.言い換えると,新しい理論やものの見方は,数学や物理学の視野を拡大するものでなければならないが,たとえそれらが合理的に有用なものとして受け入れられたとしても,そもそも2次元しか見えない3次元空間の住人が4次元空間を理解しようとするのは容易なことではない.ここでは,第4次元の直観像を得るための1つの方法として,複素初等関数の可視化と,その"媒介変数で表された"または"極座標で表された"平面曲線への応用を,映像作品の上映を通じて改めて論じてみたい.