抄録
実験参加者に一定の前庭刺激(振動)を与えた状態で,顔の皮膚に当たる風の強度を実験的に操作したところ,「刺激強度変化の有無」が自己運動知覚に影響を及ぼすことが確認された( Murata et al. , 2015).この結果を受けて本研究では,皮膚刺激の強弱(接近・後退)変化が自己運動知覚に影響するか否かを検討した.実験条件は,風の発生源を参加者に近づける条件と,遠ざける条件の 2つであった.今回の実験では参加者が座るエアロバイクを乗せた台は移動しないが,実際に台が移動した場合の振動と同等の強度の振動を台に与え,これを前庭刺激とした.自己運動知覚の指標としては,反応潜時,持続時間を測定した.実験結果は刺激が近づく条件よりも遠ざかる条件においてより速く自己運動知覚が生じることを示した.