抄録
ベンハムのコマ,すなわち,同心円状に線分が付与された白黒の円盤を低速で回転させたとき,線分が回転方向に伸縮する長さの錯視を発見した.まず,3条件(線の位置,線背景色,線幅)を変化させた円盤を使用し,比率測定法(回転速度は40 rpmと60 rpm)で主観的な線分長を計測した.その結果,「後位置/白背景」条件において顕著に伸長した(最大伸長は60rpmで11°,約1.5倍).つぎに,位置測定法(回転速度は40 rpm)で線分の端点と孤立点との主観的な位置ずれを計測した結果,ずれは最大でも2.6°であった.これらより,長さの錯視は(1)位置ではなく長さが知覚される段階で生じ,(2)白黒変化領域に接した黒線分で顕著に発生する現象であることが示唆された.