抄録
機能的近赤外分光法(fNIRS)による脳活動の計測では,安静時脳活動と課題遂行時脳活動との差分が評価対象となることが多いが,安静の定義が曖昧であるために,安静状態が十分に統制されているとは言いがたく,計測データの個人差が大きくなり,賦活領域が曖昧となる点が問題となっている.本研究では,fNIRS計測における賦活後の回復過程に着目し,より早期に安静状態に回復する条件について検討した.短期記憶課題を一定時間だけ課した後,帯域制限した動的ランダムドット(DRD)パタンを観察させた場合と十字視標を観察させた場合とで前頭前皮質の活動を比較した.その結果,DRD観察時の方が脳賦活の減衰効果が強くなり,前頭前皮質において,その差が有意となることが示された.