視対象に視線を移動させるプロセスには,ボトムアップ注意とトップダウン注意の協調的な情報処理が関与する.明確な目的を持たない自由観察時の視線移動は,視覚情報の顕著性に依存しつつ,かつ,脈絡を持った対象の選択がなされることから,ボトムアップとトップダウンの中間的な情報処理過程にあることが推察される.本研究では,自由観察時に視線が定められるメカニズムを解明することを目的として,従来の条件付き確率を考慮した視線予測モデルに対して,自然画像観察時における視線分布の主成分分析結果に基づいた重み付けを行うよう拡張を施したモデルを構築し,自由観察時における視線の予測精度について評価した.提案モデルによるシミュレーション実験の結果,従来モデルよりも予測精度が向上したことから,個人差を考慮した視線予測への応用の可能性が示された.