抄録
円筒状に湾曲した実物体と,実物体と同様の水平視差を設けたランダムドットステレオグラム(RDS)の曲面や奥行知覚の違いを調査した.本研究で用いた実物体は,ランダムドットが印刷された半円筒の透明フィルムであり,フィルムはその背面からバックライトで照射されている.実験では円筒の半径を5種,観察距離を3段階に変化させて,円筒状物体とRDSの知覚の差を調べた.解析の結果,RDSとフィルムの見えの差は観察距離と物体の視野角に依存して異なることが分かった.さらに比較的単純な数式によって,RDSとフィルムの見えの差,並びに観察距離の関係が表現できることを見出した.本結果の応用例として,実物体の見えと同じ見えを生じさせるRDSの構築方法について記す.