抄録
強磁性トンネル接合素子(MTJ)に応用可能なスピン分極率が 100%のハーフメタル強磁性体として期待されている Co基フルホイスラー合金Co2FeSi(CFS)薄膜に対して,垂直磁気異方性を発現させるための膜構造と作製条件について実験的に考察した.CFS薄膜上に MgOを積層した構造において,CFSの膜厚を 0.7 nm以下にすることでCFS/MgOの界面異方性を起源とするに垂直磁気異方性を付与させることに成功した.一方,下地層として用いたPdとの格子ミスマッチによる垂直方向の格子伸張は垂直磁気異方性発現に有効であること,また上部層においては (111)配向した Pdとの界面異方性が垂直磁気異方性に寄与していることを見出した.これらの条件を最適化することにより, CFS/MgO/CFSのMTJ構造中のCFS層をすべて垂直磁化膜化させることに成功した.