抄録
地上放送の方式である ISDB-Tの利点の一つに,同一周波数を用いたネットワーク(SFN:Single Frequency Network)を構築し周波数を有効に利用できる点が挙げられる.次世代地上放送の伝送方式では伝送容量を拡大するためにキャリア変調を高次化することが検討されている.その場合, SFN環境における伝送特性の劣化が懸念されるため,筆者らは, SFNを構成する 2つの放送所から送信する信号に対して時空間符号化を適用する符号化 SFN技術を検討し,郊外において野外実験を実施して伝送特性を評価してきた.今回,現行の地上デジタル放送で SFNを構築している墨田,戸塚,平塚のエリア内において伝搬路応答を取得し,取得した伝搬路応答を用いた計算機シミュレーションで符号化SFNの伝送特性を評価した.都市部の SFN環境においても,符号化SFNは従来のSFNと比較して伝送特性が改善することを確認したため,この結果を報告する.