2018 年 10 巻 p. 2-15
生活圏において草本植生で被覆されている領域は鉄道,道路等のインフラ緑地,公園,河川敷,空地・耕作放棄地など多岐・広面積に及ぶが,その大半を構成する大型多年雑草(とくに地下拡張型)群は刈り取り管理下でますます勢力を増している.この深刻な事態に対応する雑草管理を策定するなかで,化学的手段の適材適所的採用は不可欠である.とくにセイタカアワダチソウ,イタドリ,セイバンモロコシ等に代表される地下拡張型多年生雑草の的確な制御には,除草剤の特定の機能を活用する以外にない.なぜ,そういえるのか.本稿では,まず,対象であるこの種の多年草の生理・生態,構造上の特徴を紹介し,その生存戦略の中心が地下部の芽からの萌芽・再生にあることを明確にしている.そのうえで,長期にわたってピンポイント的にこの生育反応を阻害することで,最終的に個体全体を死亡させうる一群の除草剤の存在と特性を,さまざまな研究成果をもとに実証している.共通の特性とは地下部への優れた移行性と芽への集積およびその生長点での形態形成・細胞分裂阻害機能である.単なる ‘刈り取り代用’という誤った認識のもとにある化学的手段を,地下拡張型雑草も的確に制御することで植生の質的調節ができる手段と認識し,他手段との時間的・空間的integrationによって緑地植生の改善に活用することの重要性が強調される.