草と緑
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メヒシバの形態・生態的特性および生育地への適応的個体群分化
露﨑 浩
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2019 年 11 巻 p. 38-45

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抄録

夏生の一年生草本であるメヒシバ(Digitaria ciliaris (Retz)Koeler)の生育地は多様で,畑やその畦畔,果樹園,芝地,庭や花壇,路傍,そして海岸砂地にも生育する.本稿では,初めに,メヒシバの形態および生態的特性について,成長を追うかたちで記述する。具体的には,小穂の休眠覚醒過程,小穂の死亡,出芽の不斉一性,中胚軸の伸長による出芽,C4型光合成による成長と小穂生産などについて,形態および生態的な特性を記述する.次いで,生育地を異にするメヒシバの個体群について解説する.畑とその畦畔には,形態および生態的形質を遺伝的に異にする個体群が生育している.具体的には,畑の個体群は,畦畔の個体群に比べ,出穂が早く,小さくて休眠性の強い小穂を生産する.これは,畑で行われる耕起や除草が選択圧として働いた結果と考えられる.このような関係は,花壇とその近くの路傍に生育するメヒシバ個体群においても認められる.海岸砂地には,内陸部に生育するメヒシバに比べ大きな小穂をつけるメヒシバ個体群が生育しており,これは海岸砂地の乾燥条件などに適応した結果と推察される.メヒシバは,各々の生育地における攪乱(耕起など),競合,環境圧(乾燥など)に対し適応的な個体群を分化させることで,多様な生育地を獲得し,住みかとしていると考えられる.

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© 2019 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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