草と緑
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雑草リスク情報-その4:知る人ぞ知る雑草花粉の脅威
伊藤 幹二
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2021 年 13 巻 p. 38-49

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抄録

花粉によって起こるアレルギー疾患花粉症(pollinosis)は,欧州のイネ科雑草花粉症,北米のブタクサなど広葉雑草花粉症および日本のスギ花粉症が世界三大花粉症と呼ばれている.雑草花粉症は日本にもあり,とくにヒートアイランド化と地表の不透水化による都市・市街地生態系の近年の変貌は,雑草のバイオマスとそこから放出される花粉の量や動態を通じて花粉症発症に影響していることが推察される.そこで,NPO法人緑地雑草科学研究所の市民科学集団「雑草ウオッチャー」を対象に,抗原性植物として登録のある雑草の分布,ならびにスギ花粉以外の花粉症発症例に関してデータ収集を実施した.得られ結果によると,発症の原因となる抗原(アレルゲン)を産出する抗原性雑草は,生活圏に広く見られ接触する機会も多く,報告者の半数以上がアレルギー性鼻炎の経験者であった.雑草花粉によるアレルギー性疾患は,複数の重症者の存在や家族・知人への広がりからみて,スギ花粉症に劣らず深刻な状況にあることが認められた.この目に見えない雑草花粉粒汚染の実像を理解するために,さらに文献的調査を行い,国内外の経緯とデータを基に特定された雑草アレルゲン(抗原),花粉粒の標的臓器と症状,花粉粒の移動と人体への侵入,花粉粒の大気中での挙動,花粉粒が運ぶ微生物について解説した.本稿の目的は雑草花粉症を「恐怖メッセージ」として受けとられることではなく,生活圏の雑草害の本質とそれを放置するリスクの重大さに気づいていただき,そのリスクの回避に多くの管理者と生活者の目が向けられることにある.そして,私たちの健康と生活環境の改善に係わる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に生かされることが大切である.

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© 2021 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所
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