抄録
増大する生活圏の雑草リスクは都市・市街地から農村地帯まで及んでいます.この状況は雑草植生自体の変化や除草作業の削減に帰されがちですが,雑草生態系が引き起こすリスクの本質を視ることなく,対症療法的対応を続けてきたことが最大の原因です.日本は戦後,官民あげて除草剤の導入に邁進し,それゆえ薬剤使用に何層もの法的規制を作り上げた結果,適切で多様な雑草対策の選択肢が著しく狭まることになりました.このように「原因:ペスト」よりも「手段:ペステイサイド」に焦点を当ててきた日本の問題点を,雑草リスク・管理への認識と対応の歴史的流れから考察し,さらに,国際情勢との乖離を示すため,欧米の雑草リスク管理の現状と国際的ルール(SPS協定など)をも紹介しています.