草と緑
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クズ(Pueraria lobata Ohwi)
伊藤 操子
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2010 年 2 巻 p. 36-41

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抄録

日本におけるクズ(Pueraria lobata Ohwi)は,万葉集にもよく歌われているが7~8世紀にはかなり広がっていたようだ.また,季節の風物というだけでなく,古来,生活必需資材として様々な形で利用されてきた,塊根から採る葛粉は食料として,つる繊維から織る葛布は衣類などに,茎葉は家畜の飼料や肥料になり,葛根は貴重な薬であった.しかし,近年利用されなくなった人里のクズは,列島改造計画による土地造成で形成された都市・市街地の多くの解放地に侵入し急速に拡がった.河川敷,鉄道敷,高速道路では最優占種であることが報告されており,造林地,果樹園等も含めその被害は深刻である.米国では,土面保護植物や第2次大戦で荒廃した放棄畑の土壌改良用として政策的に普及したクズが,現在では制御不能な強害草に指定されている.クズの植物体は3出複葉を着ける当年生茎,多年生茎,節から発生する節根,これが伸長・肥大した主根(塊根)で形成されている.当年生茎は,4月上・中旬に1,2年生茎の腋芽から発生し,地表を這い進むものと立ち上がるものとがあり専有面積・容積の拡大に働く.クズの種子繁殖力は低く,繁殖は主に多年生茎が昆虫幼虫の食害や老化で分離することによると考えられる.

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© 2010 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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