2023 年 75 巻 5 号 p. 187-194
82歳女性,うっ血性心不全(CHF)と糖尿病性腎臓病による保存期慢性腎臓病(CKD)ステージG5で近医に通院していた.今回,難治性CHFで当院に入院し,重症の大動脈弁狭窄症が判明した.薬物治療が奏功せず,入院25病日に経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が実施された.周術期の尿量低下と腎機能増悪から27病日よりカテーテル挿入下に持続的血液濾過透析を導入した.その後血液透析(HD)離脱はできなかったが,HD導入前のTAVIにより循環動態が安定したため透析困難症を認めず,心負荷を懸念することなく安全に自己血管使用皮下動静脈瘻(AVF)を作製できた.TAVIは低侵襲および循環動態の早期安定化から,CKD G5に対する安全なHD導入ならびにAVF作製を行う上で有用であることが示唆された.