岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
75 巻, 5 号
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Original
  • 清川 哲郎, 大浦 一雅, 千葉 貴之, 藤原 俊朗, 板橋  亮, 小笠原 邦昭, 人見 次郎, 前田 哲也
    2023 年 75 巻 5 号 p. 169-180
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル オープンアクセス
    頸動脈プラーク内新生血管(IPN)を評価するためのsuperb micro-vascular imaging(SMI)と造影超音波検査(CEUS)を比較検討した.70%以上の頸動脈内膜切除術を受けた患者25名を登録した.SMIにより頸動脈プラーク内の微小血流(IMVF)信号を評価し,IMVF信号強度の最大値と最小値の差(IDIMVF)と内腔の信号強度(IDl)の比を算出した.また,CEUSで造影強度を測定し,プラーク内強度の最大値とベースライン値の差(EIp)と管腔内曲線(EIl)の比を算出した.抗CD34抗体で染色した組織切片でIPN数,面積を測定した.8名でIMVF信号を,13名で造影効果を認めた.EIp/EIl比はIPN面積と有意な相関があったが(ρ =0.50, p = 0.01),IPN数とは相関がなかった(ρ = 0.11, p = 0.60).IDIMVF/IDl比はIPN数(ρ = -0.27, p = 0.20),面積(ρ = 0.04, p = 0.84)のいずれとも相関がなかった.頸動脈プラークにおけるCEUSの結果とIPNの間には有意な相関があったが,SMIとIPNの間には相関がなかった.これらの知見を確認するためにはさらなる研究を要する.
Case Report
  • 大島 広之, 片桐  紘, 小笠原 聡, 黒坂 大次郎
    2023 年 75 巻 5 号 p. 181-186
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル オープンアクセス
    眼窩蜂窩織炎は,病原微生物によって眼窩軟部組織に生じる急性化膿性炎症である.歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎は,頻度は稀ながら失明や死亡に至る場合が多い.今回我々は適切な抗生剤加療で視力を温存できた歯性感染症から生じた眼窩蜂窩織炎と敗血症性肺塞栓症の1例を経験した.症例は72歳男性.左眼瞼腫脹を主訴に眼科を受診した.右視力0.7,左視力0.125で,左眼瞼周囲の発赤と著明な眼球結膜充血を認めた.体温37.6度で,全身検索を行い血液検査と画像検査から敗血症性肺塞栓症と診断され,左上大臼歯周囲の歯周炎が感染源と考えられ抗生剤加療を開始した.血液培養で Streptococcus constellatusが検出され,感受性の高い抗生剤で肺塞栓症は軽快した.眼窩蜂窩織炎は,当初MRIで左眼窩部に多発する膿瘍を認め,眼球は前方に圧排され視神経症を来たし左視力は0.01に低下したが,全身の改善にやや遅れて膿瘍も縮小し,視力0.2と改善した.眼窩蜂窩織炎では,早期から全身検索を進め,適切な抗生剤加療を行うことが重要と思われた.
  • 菊池  調, 赤坂 祐一郎, 吉川 和寛, 松浦 佑樹, 野田 晴也, 岡本 好生, 石川  有, 田中 文隆, 阿部 貴弥, 旭  浩一
    2023 年 75 巻 5 号 p. 187-194
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2023/12/27
    ジャーナル オープンアクセス
    82歳女性,うっ血性心不全(CHF)と糖尿病性腎臓病による保存期慢性腎臓病(CKD)ステージG5で近医に通院していた.今回,難治性CHFで当院に入院し,重症の大動脈弁狭窄症が判明した.薬物治療が奏功せず,入院25病日に経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が実施された.周術期の尿量低下と腎機能増悪から27病日よりカテーテル挿入下に持続的血液濾過透析を導入した.その後血液透析(HD)離脱はできなかったが,HD導入前のTAVIにより循環動態が安定したため透析困難症を認めず,心負荷を懸念することなく安全に自己血管使用皮下動静脈瘻(AVF)を作製できた.TAVIは低侵襲および循環動態の早期安定化から,CKD G5に対する安全なHD導入ならびにAVF作製を行う上で有用であることが示唆された.
学位報告
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