1976 年 1 巻 3 号 p. 150-161
地域保健活動の中に,齲蝕予防を地域の健康指標の1つにとり入れて,組織的な活動を開始した。 乳歯齲蝕が低年齢児においてすでに多発的な罹患傾向にあるので,とくに乳幼児からの齲蝕予防として,フッ化物歯面塗布,歯口清掃,食事指導を実施してその検討を行った。
本活動地区は岩手県下の一村単位(人口,6,736人,昭和50年,農山村)の規模であるが,本研究の目的は,この地区における地域歯科保健活動の試みが,コミュニティの規模にかかわらず普偏的に実施できる内容についての評価を行うことである。さらに,この地区における齲蝕予防計画の特徴は,乳歯列から永久歯列にかけての継続的な予防活動を主体としたものである。昭和49年度の活動開始時期における乳歯齲蝕罹患についての疫学的調査結果を罹患図型分析でみると,1才児においてdeft=0歯(齲蝕ゼロ)の者が55%,deft=1~5歯の者が約10%2才児においてはdeft=0歯の者は26%と1才児の約½に減少している。3才児,4才児ではdeft=0歯の者は著しく減少(6%および2%)して,とくに4才児ではdeft=5歯以上の 者が約90%以上を占めるようになる。この初年度の罹患図型に対して,地域歯科保健活動による齲蝕予防の効果がどれだけ経年的に変動させることが可能かについて今後の課題としている。本報告では,乳歯および永久歯の齲蝕罹患についての疫学的分析と,その予防対策への行動開始に至る経過について検討した。