岩手医科大学歯学雑誌
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原著
くる病における歯科学的所見
関 重道土田 秀三小守林 尚之関山 三郎似内 晁
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1976 年 1 巻 3 号 p. 143-149

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抄録

 くる病は石灰新陳代謝障害によって起る疾患とされており,歯科的には,エナメル質減形成をはじめとし,種々の障害を伴ないやすい。私達は,15才女性のくる病における歯科的所見を観察するとともに,文献的考察を加え,従来と同様の所見を得た。

 歯牙所見では上顎前歯,小臼歯に高度のエナメル質減形成を認め,全体的には多発性の齲蝕を呈していた。上顎では歯列弓はV字型で,口蓋はやや深く,咬合状態は開咬を示していた。X線所見ではが埋伏,は逆生埋伏歯を示していた。歯根は弩曲し,Lamina duraは消失,根尖未完成歯などが認められた。 顎骨においては石灰化不全が著明で,特に下顎骨では骨梁が淡く乱れており,歯槽骨は発育不全で,骨体は全体として細くなっていた。セファログラムの所見では,上顎の成長発育量が前方かつ垂直的に極めて劣っており7~10才程度と推定された。

 臨床経過は,齲蝕高度なものは抜歯を施行したが,その他の歯牙はできるだけ保存に努め,最終的には満足すべき咬合回復を得ることができた。

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1976 岩手医科大学歯学会
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