1985 年 10 巻 2 号 p. 47-54
ヒト副耳下腺の組織構築は明らかでない。そこで筆者らは系統解剖実習屍体より得た副耳下腺を用いて粘液腺の出現を中心に組織学的検討を行った。その結果, 副耳下腺の組織構築は基本的には耳下腺に類するが, 導管系の発達は劣っていた。また, 腺上皮の退行性変化の程度は同年代でも著しい差が認められた。粘液細胞は検索した副耳下腺の全てにみられた。これら粘液細胞の出現と腺上皮の退行性変化との間にはとくに関連は認められなかった。粘液細胞の出現を組織構成部位別にみると, 小葉内導管系での出現率が他の部位にくらべ低かった。小葉間導管と主導管での粘液細胞の出現は慢性炎症性変化と何らかの関連があるものと思われたが, 腺房部と小葉内の導管系ではこの様な傾向はみられなかった。以上の結果について耳下腺での報告と比較しながら検討を加えるとともに, 漿液腺における粘液細胞の出現の意義について若干の考察を行った。