1986 年 11 巻 3 号 p. 175-194
卵巣機能の低下が無歯顎々骨に及ぼす影響を検討する目的で, 卵巣摘出ラットを実験モデルとして用い, 脛骨と抜歯後の顎骨の骨動態を術後24週目まで形態学的に観察した。
卵巣摘出群の血清Ca濃度は術後8週目において一過性に低下した。また, この時期に一致して卵巣摘出群の脛骨近位端部における骨梁数は減少し始め, 術後24週目には著明な骨梁数の減少と骨髄組織の脂肪化がみられた。術後12週目以降の卵巣摘出群の顎骨内部には骨髄腔の拡大がみられ, 術後24週目には骨髄組織の脂肪化も認められた。しかし, 血清無機P濃度, 初期の抜歯創の修復過程ならびに脛骨の骨幹部骨内膜面と顎骨の歯槽頂部における骨形成の程度に関しては, 卵巣摘出群と対照群との間に差異は認められなかった。
以上の所見により, 卵巣機能は脛骨および無歯顎々骨では, 骨量を維持する重要な役割を担っていることが示唆された。