1987 年 12 巻 3 号 p. 303-316
義歯性口内炎の発症メカニズムを解明するためにCandida albicans (serotype A)の産生するプロテアーゼとの関連性について検討を加えた。
臨床的に口蓋が正常な義歯装着者群(正常者群)と口蓋に義歯性口内炎(Budtz-Jörgensenの分類によるType Ⅰ, Ⅱ)の認められる義歯装着者群からC. albicansを分離し,プロテアーゼ産生能, 酸産生能および増殖能について調べた。また, C. albicansのプロテアーゼ産生能と口蓋粘膜に対する病原性との関係を検索するために, プロテアーゼ産生能の高い菌株と低い菌株を用いてラットの口蓋に実験的に義歯性口内炎を発症させ得るかどうかを試みた。
その結果, C. albicansのプロテアーゼ産生能は, 義歯性口内炎Type Ⅱ 群から分離した菌株で特に高い傾向を示したが, 正常者群と義歯性口内炎 Type Ⅰ 群から分離したC. albicansの菌株にも高いプロテアーゼ産生能を示すものもあった。また, 酸産生能と増殖能については各群間で差がなかった。
動物実験では, プロテアーゼ産生能の高い菌株を接種した実験群においてC. albicansによる角化層内侵入や炎症が高頻度にみられた。
これらのことから, 義歯性口内炎の発症メカニズムにC. albicans (serotype A)の産生するプロテアーゼが関与している可能性が示唆された。