岩手医科大学歯学雑誌
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研究
50% 脱アセチル化キチンを基剤とする賦形材と α型リン酸三カルシウムを複合した骨補填材の生体適合性および骨伝導能
昆 隆一市丸 俊夫永田 勝秀齋藤 設雄桂 啓文荒木 吉馬
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1998 年 23 巻 3 号 p. 205-215

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抄録

低濃度の酸で溶解可能な脱アセチル化度50%の水溶性キトサンおよびキトサンにアルギン酸塩を加えた混合物を基材とする賦形材に α型リン酸三カルシウムを加えた骨補填材を作製した。 賦形材のみを用いたラット皮下埋入試験および骨補填材の骨内埋入試験により炎症反応, 生体吸収性および骨伝導能を調べた。 埋入後, 4週までの病理組織像を光顕的に検索した。

脱アセチル化度を50%にすることにより, キトサン溶液を作製するための酢酸およびクエン酸の濃度はそれぞれ0.1, 1.0%と従来の賦形材よりも低くすることができた。 炎症反応の程度はキトサン単独系がキトサンとアルギン酸塩の混合系より高く, 酸の種類および濃度による差は少なかった。生体吸収性は, 単独系が混合系より高く, 高濃度の酸を用いたものが低濃度より高くなる傾向を示した。 したがって本系材料による炎症反応および生体吸収性は主として水溶性キトサンによるものと考えられた。

骨伝導能に関しては, すべての試料において埋入期間の経過とともに, 徐々に新生骨によって間隙が満たされ, 周囲に生じた梁状骨は消失してゆく所見が得られた。 各試料間の比較では, クエン酸を用いた試料が酢酸を用いた場合と比較して有意に骨伝導能が高いことが認められた。

以上のことより, 今回作製した材料は, いずれも骨補填材として十分な生体適合性および骨伝導能を有する材料であることが示唆された。

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1998 岩手医科大学歯学会
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