岩手医科大学歯学雑誌
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症例
非観血的治療により著しい骨格型反対咬合を改善した唇顎口蓋裂患者の19年間の治療経過について
八木 實金野 吉晃三條 晃清野 幸男三浦 廣行
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2001 年 26 巻 3 号 p. 200-208

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抄録

片側性唇顎口蓋裂患者は手術後の上顎の劣成長により,しばしば前歯部および臼歯部反対咬合の不正咬合が生じる。そのため,我々は唇顎口蓋裂患者においては,出生直後から成人に至るまで四期に分けて非観血的矯正治療を行っている。すなわち,第一期は口唇形成手術前の患児に対して行う術前顎矯正治療や術後の顎発育の経過観察を行う時期である。第二期は乳歯咬合完成後に行う上顎側方拡大や顎発育の成長誘導の治療を行う時期である。第三期はマルチブラケット装置を用いて永久歯列の再排列を行う時期である。第四期は永久歯列の再排列後の保定と,その後の補綴治療と長期的観察を行う時期である。
今回,我々は二期から四期の19年間にわたり,著しい骨格型反対咬合の唇顎口蓋裂患者を観察し,矯正治療の効果について評価した。 患者は,初診時12歳11か月の左側唇顎口蓋裂の女子である。側貌は中顔面部が陥凹し,著しい反対咬合を呈していた。患者の動的治療期間は5年7か月であった。矯正治療により骨格的な改善は獲得できなかったが,被蓋は主に前歯の移動で改善された。19歳から32歳までの経過では,骨格的な変化はほとんど認められなかったが,前歯部の歯軸の変化が認められた。
したがって,獲得した咬合を安定させるために,さらに長期間の保定と観察が必要であると考える。

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2001 岩手医科大学歯学会
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