岩手医科大学歯学雑誌
Online ISSN : 2424-1822
Print ISSN : 0385-1311
ISSN-L : 0385-1311
症例報告
Diazepam を用いた静脈内鎮静法の臨床経験
水間 謙三池田 英俊山ロ ー成中里 滋樹藤岡 幸雄関山 三郎涌沢 玲児
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 5 巻 1 号 p. 41-46

詳細
抄録

歯科治療において, 恐怖をいだく患者やその治療時にいわゆる脳貧血様症状を繰り返す患者にしばしば遭遇するが, この様な場合には局所麻酔のみでは充分な治療が得られない。 そこで我々は静脈内に精神安定剤 diazepam を投与して患者を鎮静させ, 局所麻酔剤を併用することにより充分に治療を行うことができ, 良好な結果を得ることができた。

①呼吸・循環系への影響はほとんど見られない。 すなわち, diazepam 投与直後に収縮期血圧が平均8mmHg下降したのみで, 呼吸数, 心拍数は変りなかった。

②術中に患者の大半は疼痛を訴えたが, それは施術に支障を与えるほどのものではなかった。

③Diazepamによる術中の健忘効果が期待でき, 患者の感じた施術時間が実際の施術時間より短かかった症例が14例中10例あった。

④Diazepam投与から帰宅可能と判定されるまでの時間は80分から230分と個人差が大であったが, 平均値でみると151.6分で他の報告とほぼ同程度であった。

⑤帰宅後の異常所見として重症なものはなく, 睡眠時間延長, 倦怠感, 眩量などが見られたに過ぎない。これらは diazepam の作用と思われた。

⑥14例中12例の患者らは再び歯科治療を受ける場合にはこの diazepam 静脈内鎮静法を希望したいと申し出があった。

著者関連情報
1980 岩手医科大学歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top