岩手医科大学歯学雑誌
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症例報告
インプラント義歯装着後に撤去を余儀なくされた1症例の支台歯と, その周囲組織の病理学的補綴学的考察
根本 秀樹谷口 雄二岩本 一夫菊月 圭吾田中 久敏佐藤 良三嶋中 豊彦
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1983 年 8 巻 1 号 p. 72-81

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抄録

近年, 固定性局部義歯の支台歯に骨内ブレードインプラントを用いることにより, 良好な成績を得たという臨床報告がなされている。

しかし, インプラント頸部と, これに接する周囲組織の生体反応についての研究報告はいまだに混沌としている。

今回, 我々は上顎右側犬歯部の骨内ブレードインプラントを支台歯とするインプラント義歯装着後, 疹痛と異和感に悩まされて当科を訪れた患者を経験した。

診査の結果, インプラント義歯は予後不良と診断された。また, X線的にはインプラント義歯基底面下の歯槽骨に吸収像を認めた。

インプラントと周囲組織を一塊として摘出した後, インプラント周囲組織の変化について, 病理組織学的ならびに補綴学的検索を行った。 検索の結果, インプラント周囲組織に炎症反応が進行しているのが明らかとなった。

この症例を見た限りでは, 適切な設計による可撤性局部床義歯よりも, インプラント義歯を用いた治療の方がよりよい結果を得られると結論づけるにはまだまだ疑問が多いように思われた。

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1983 岩手医科大学歯学会
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