岩手医科大学歯学雑誌
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原著
ラット切歯の完全破折に伴う経時的形態変化について
金子 良司武田 泰典鈴木 鍾美
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1984 年 9 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

ラット両側下顎切歯を鈍的に完全破折し, その経時的形態変化を観察した。その結果,破折後3日目では, 歯髄ならびに歯周組織に限局した化膿性炎, 細菌の集塊, 壊死組織等がみられたが, 歯髄深部に炎症が波及したものはなかった。破折後4日目には,化膿性炎はほぼ消退し露髄面には幼若肉芽組織の形成がみられ, 7~10 日目には dentin bridge が形成されていた。介達的に破折した象牙質はその離開度にかかわらず, 離開部に肉芽組織が充満し, 経過とともにその歯髄側壁より幼若新生象牙質が新生添加されていた。

なお, 破折した歯牙はその経過中対照群のものと同程度に発育伸長していた。また実験群の半数には根端付近の舌側部幼若象牙質層ならびに象牙芽細胞層の不規則な波状化, また一部には根端付近唇側のエナメル質形成異常がみられた。以上の結果より, ラット切歯の歯髄は臼歯で報告されているものにくらべ治癒能力がより強いものと考えられた。さらにそれぞれの所見について考察を加えた。

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1984 岩手医科大学歯学会
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