本学歯科放射線科において, 唾液腺造影検査を実施した 85 症例について検討を行った。その症例の内訳は, 依頼科臨床診断の病態別にみると, 炎症 16 例, 唾石症 18 例, 腫瘍 35 例, その他 16 例であった。またその症例数を唾液腺別にみると, 耳下腺 26 例 (31%), 顎下腺 58 例 (68%), 舌下腺 1 例 (1%) であった。
これら 85 症例の内, 病理組織学的診断, あるいは口腔外科における確定診断の得られた, 53 症例についての臨床的評価を検討した。これら 53 症例の内で明らかに造影検査が有効であったと評価されるものは 38 例であった。症例の確定診断には, 腫瘍性病変などの様に摘出後, 病理組織学的に検索を加えられた症例を除くと, 造影所見が確定診断に大きな役割をはたしていると考えられた。
以上の結果をまとめると, 唾液腺造影検査は歯科口腔外科領域の診断に有効であった。特に唾石症においては, その位置の確認に有効で治療上欠くことのできない検査法である。疾患に特有の X 線造影像を示すも のも多く, 腫瘍性病変あるいは静止性骨空洞の鑑別では, 腺との関係把握に有効であり, さらに超音波診断, シンチグラフィー, C-T 検査を併用すれば, より精度の高い診断が可能と思われた。