2019 年 13 巻 p. 45-56
カヤネズミの生息環境は,通常,低地の草地,水田,畑,休耕地,沼沢地などのイネ科・カヤツリグサ科の植物が密生する水気の多いところに多いとされる.一方,全国的に河川敷・堤防が最もよく利用されているとの報告もあるが,河川敷・堤防の植生と営巣との関係についての報告は少ない.さらに,都市域の河川敷緑地における生息状況と植生面積との関係について調査検討した事例は見られない.そこで,名古屋市西部の庄内川の河川敷・堤防においてカヤネズミの球状巣を調査し,分布と周辺植生の関係を解析することで,都市域の河川敷緑地に生息するカヤネズミの営巣環境の特徴を把握した.その結果,確認された球状巣を中心に20m バッファ内の周辺植生は,セイバンモロコシやオギが優占する草地面積が745.4–860.9m2(65.1–79.3%)と多くを占め生息適地と考えられるものがあった.一方で,人工裸地や公園・グラウンドが優占し,草地面積が114.2–297.8m2(9.2–30.1%)と少ないにも関わらず営巣していることが確認された.名古屋市のような都市部の人為的影響の強い河川敷緑地において,わずかな植生を営巣場所として活用していることが明らかとなった.