伊豆沼・内沼研究報告
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最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 大熊 啓斗, 河原 豪
    2025 年19 巻 p. 1-5
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー

    ヤマトサンショウウオHynobius vandenburghiは生息地減少や外来生物による捕食で個体数を減らしている.本研究は,滋賀県甲賀市における,外来種アメリカザリガニProcambarus clarkiiによるヤマトサンショウウオ捕食を,捕食していた組織片の,ミトコンドリアDNA(mtDNA)領域内,チトクロームb(cyt b)遺伝子を用いたDNA解析で明らかにした.この結果は,甲賀市のヤマトサンショウウオに新たな危機が迫っている事を示唆する.

  • 堀江 真子, 藤田 朝彦, 池谷 幸樹, 北村 淳一
    2025 年19 巻 p. 7-16
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー

    木曽川の43氾濫原水域(ワンドやタマリ)において,2023年9月に計5日間,定置網を用いて特定外来生物であるオオクチバスを捕獲した.オオクチバスは18氾濫原水域から捕獲され,それらの胃内容物を形態観察により種同定し,その食性を調べた.その結果,27個体のオオクチバス(全長:平均138.1±33.9 mm,範囲70.4–194.2 mm)の胃内容物からは,コイ科を中心とした14種の魚類と,エビ類,昆虫類が確認された.また,当歳魚と推定される小型個体をふくむ27個体のオオクチバスのうち24個体が魚類を捕食していた.ワンドやタマリのような河道内氾濫原は,在来魚類にとっての産卵場,仔稚魚の成育場として機能する.しかしながら,同時にオオクチバス小型個体でも捕食可能な小型魚類が豊富な場所でもあるため,本種の好適な生育場となっている可能性が考えられる.したがって当地における本種による在来魚類群集への負の影響は大きいものと考えられる.

  • 田尻 浩伸
    2025 年19 巻 p. 17-32
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー

    石川県加賀市のラムサール条約湿地・片野鴨池で越冬するオオヒシクイAnser fabalis middendorffiiは,片野鴨池内ではマコモZizania latifoliaなど抽水植物の根茎やオニビシTrapa natans var. quadrispinosaの果実を採食する.オニビシは一年生の浮葉植物で,4月に発芽して6月以降に盛んに生育し,7月下旬に立葉群落が完成する.7月上旬には開花が始まり,8月にもっとも開花数が多くなるが,8月下旬には排水によって枯死する.2009年から2022年のうち9年間,8月末または9月初旬にオニビシ果実(以下ヒシ果実)を採集し,その密度,大きさ,乾重と葉冠密度を測定した.また,これらに影響を与える気象条件を検討し,さらにヒシ果実の密度,大きさ,乾重や葉冠密度とオオヒシクイ個体数の関係を検討した.本研究において,ヒシ果実の密度については7月の降水量との間に負の相関が認められた.ヒシ果実の乾重は6–7月の日平均気温および日最高気温と,ヒシ果実の大きさは6月,6–7月の月最高気温と,それぞれ正の相関を示した.葉冠数については8月,7–8月の月最低気温との間に負の相関が認められた.秋から冬にかけて記録されたオオヒシクイ個体数は,ヒシ果実の大きさとの間に有意な負の相関を示した.既往の研究と片野鴨池におけるオニビシのフェノロジーから,温度は葉冠完成時期や開花開始時期,デンプンの合成や蓄積速度に影響を与え,結果としてヒシ果実の大きさや重さが大きくなったと考えられた.一方,降水量は,雨雲が日射を遮蔽するために葉冠完成時期や開花開始時期が遅れ,ヒシ果実の密度に影響した可能性が考えられた.オオヒシクイ個体数は,ヒシ果実の大きさとの間にのみ有意な負の相関を示した.この負の相関は,オオヒシクイが小さい果実を選好することを反映しているのかもしれない.片野鴨池においてオオヒシクイの保全を進めていくためには,今後,ヒシ果実以外のオオヒシクイの食物と気象条件の関係を把握するとともにオオヒシクイにとって好適な食物種を把握することも有効だろう.

  • 伊藤 玄, 二村 凌, 山口 達成, 羽多 宏彰
    2025 年19 巻 p. 33-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    2017年に北海道においてヤリタナゴとアカヒレタビラが採集された.本報告は,北海道における両種の標本に基づく初記録である.ミトコンドリアDNA解析により,ヤリタナゴは東北地方日本海側,アカヒレタビラは関東地方からの移入であると考えられた.2022年と2023年の調査により,同所的に生息する生きたヨコハマシジラガイの鰓内からヤリタナゴの仔魚が見つかり,またヤリタナゴが100個体以上採集されたことから,ヤリタナゴは北海道で再生産していると判断された.

  • 川中 太陽, 川口 晃志郞, 藤井 琉穂, 三内 悠吾
    2025 年19 巻 p. 43-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    京都府淀川水系においてドジョウ在来系統と外来系統を形態的に判別し,両系統の生息状況を調査した.調査の結果,京都盆地の外部においては在来系統が多く確認された一方で,京都盆地の内部における在来系統の分布は局所的であり,外来系統が京都盆地の広域に生息しているということが明らかになった.また,京都府淀川水系では初記録となる外来種カラドジョウも確認された.

  • 藤田 宗也, 山中 裕樹
    2025 年19 巻 p. 53-63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    宮崎県大淀川水系に侵入した国外外来魚であるコウライオヤニラミの胃内容物解析を行った.解析の結果,体サイズを問わずに水生昆虫が重要な餌資源となっており,中でもカゲロウ類の餌料重要度指数が高かった.本種は生活型の異なるさまざまな水生昆虫を幅広く捕食していたことから,水生昆虫に対する食害や,水生昆虫を餌とする中流域の在来魚類との競争が懸念される.

  • 萩原 富司, 諸澤 崇裕
    2025 年19 巻 p. 65-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    マハゼAcanthogobius flavimanusは日本の内湾や河口域に生息し,遊漁や漁獲対象として内湾域での水産業に寄与していたが,漁獲量が激減するとともに,高価な魚となっている.本種については産卵生態,初期発生や仔・稚魚の形態については詳細な報告があるものの,生息密度の年変動を比較した報告はほとんどない.本研究では努力量を一定とした釣獲法による定点観測を10年間継続することにより,生息密度の長期的な変動を調査した.2009年から2019年に行った122回(努力量は244時間)の調査で,847個体のマハゼを釣獲した.マハゼのCPUE(単位努力量あたりの捕獲数)は0~31(個体/人/2時間)で,経年変動は見られなかった.一方,CPUEの季節変化は明瞭で,2~5月まではほとんど0であり,6月以降次第に上昇し,8~11月まで8~31の高い値を示した.一部の個体について,鱗の隆起線を観察することにより年齢査定を行った.標準体長93mmの個体の鱗では広帯と狭帯が1組存在したことから0歳魚,標準体長143mmの個体の鱗では広帯と狭帯が2組存在したことから1歳魚と判断された.これにより調査地には2つの年級群が生息していることが確認された.月ごとの体長組成から年級群別の出現情況を推定した結果,0歳年級群は8月頃80mmに成長した個体が釣獲され始め,その後10月から12月頃には120mmに成長した.1歳年級群は8月頃120~130mmであった個体が10月から11月には140~190mmにまで成長した.本研究により,CPUEの経年変化や季節変化,年級群の出現や成長状況が確認されたことから,遊漁者による丁寧な釣果の記録は,魚類モニタリングに有効であることを示した.

  • 松村 光聖, 三内 悠吾
    2025 年19 巻 p. 77-83
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    オオシマドジョウ(Cobitis sp. BIWAE type A)の繁殖行動はこれまでに観察例がなく,繁殖に関する知見はほとんどない.2024年の4月7日と4月10日に各1回,4月12日に2回の合計4回で水槽環境下においてオオシマドジョウの繁殖行動の一部である追尾行動と巻きつき行動を観察し,その様子を撮影した.

  • 江口 章子, 島田 知彦, 今村 彰生
    2025 年19 巻 p. 85-99
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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    環境省レッドリストIB(EN)のナゴヤダルマガエルをはじめ,ヒガシニホンアマガエル,トノサマガエル,ツチガエル,ヌマガエルの5種が同所的に生息しているという水田環境において,多種が共存する条件での食性の詳細を報告する.2010年4月–11月の調査でヒガシニホンアマガエル36,ヌマガエル172,ツチガエル36,トノサマガエル98,ナゴヤダルマガエル136の計478個体を捕獲し,成体/幼体の別,性別,口幅,体重を測定した.その結果,7月下旬の水田の中干しの前後で,採集された個体のサイズが成体クラスから幼体クラス中心へと移行していた.胃内容物として3770個体,総体積158077mm3,総湿重量367.3gの餌動物が検出された.胃内容物がない「空胃」の個体も含まれた(種ごとの空胃率0.055–0.58).胃内容物の個体数ではカメムシ目,ハチ目,トビムシ目が卓越し,体積ではコウチュウ目,ハサミムシ目,ハエ目,チョウ目が卓越していた.胃内容物についてSCI(胃内容物重量指数),IRI(相対重要度指数)を検討した結果,先行研究とおおよそ合致する結果が得られたが,ナゴヤダルマガエルやヌマガエルにおいて,秋季にトビムシ目を捕食する傾向が顕著であった点は特筆に値する.調査地では,本調査の後に農地基盤整備事業により環境改変がなされたため,希少な5種共存については最後の記録になるかもしれない.

  • (公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
    2025 年19 巻 p. 107
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/30
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