名古屋市内に位置する名城大学および東山動植物園・世界のメダカ館で栽培されているヒメコウホネおよびヒツジグサの産地の特定を試みた.聞き取り調査の結果,3 つの産地情報が得られた.すなわち,名古屋市天白区八事裏山のおたま池産のヒメコウホネ・ヒツジグサ(産地A: 名城大学栽培),同八事裏山の天白渓湿地(またはその周辺の湿地)産のヒメコウホネ(産地B: 名城大学栽培),同八事裏山の詳細地点不明の湿地産のヒメコウホネ(産地C: メダカ館栽培)である.標本調査の結果,産地A のヒメコウホネおよびヒツジグサについては,1970–1980 年代の標本が確認された.これらのことから,少なくとも産地A 個体群は名古屋市産のヒメコウホネおよびヒツジグサであると判断した.名古屋市産ヒメコウホネおよびヒツジグサは絶滅したとされているため,産地情報が明らかな産地A の個体群は,名古屋市の生物多様性保全において貴重である.