2008年6月の調査で,伊豆沼と蕪栗沼から3科にまたがる25分類群の水生貧毛類を記録した.このうち,伊豆沼で確認されたフユナガレイトミミズは,本種の最北の記録である.伊豆沼沖合の湖底に見られる貧毛類群集の構成は,中部から東北日本に分布する浅い富栄養湖の構成とよく似ており,ユリミミズが優占し,イトミミズを欠くという特徴を持っていた.日本の他の富栄養湖と比較すると,伊豆沼沖合の貧毛類群集は密度が低く,その原因として魚類による高い捕食圧が推測された.伊豆沼沿岸部の水草帯では,葉上性のミズミミズ科が優占し,蕪栗沼では,おそらく植生が豊富な低湿地の環境を反映して,底生種,葉上種,湿地性種が混在する貧毛類群集が見られた.