伊豆沼・内沼研究報告
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導入地域におけるオオクチバス当歳魚個体群の魚食への移行
安野 翔菊地 永祐
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2012 年 6 巻 p. 1-16

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抄録

オオクチバスMicropterus salmoides は,北アメリカ南東部原産の魚食性外来魚である.世界各地に導入されており,その強い捕食圧で在来魚類群集の種多様性や個体数を激減させている.オオクチバスは,体サイズが小さい時期には動物プランクトン等を捕食しているが,成長に伴い魚類を捕食するようになる.本稿では,原産地および導入地域における魚食へ移行するタイミング(魚食を開始する体サイズ)についてのデータを紹介した後,当歳で魚食に移行することの意義,個体群レベルでの魚食への移行状況について解説し,さらに魚食移行の可否の決定要因について論じた.本種が魚食を開始する体サイズは,地域間や水域間で大きく異なる.生後1 年目で栄養価の高い魚類を捕食するようになれば,成長速度が上昇し,秋までに体サイズが大きくなるので,冬季の死亡率も低下する.そのため,当歳魚の魚食への移行の可否は,後の成魚個体群への加入に大きく影響する.原産地では生後1 年目に魚食に移行できないケースもごく普通に見られる.そして,当歳魚個体群の中であっても, 1 年目に魚食になれる個体となれない個体が混在することが多く,しばしば2 山型の体サイズ分布を示す.一方導入地域では,個体群レベルでの魚食への移行についてはほとんど調べられていないが,日本においては2 つの研究例があり,すべての当歳魚が魚食に移行する事例と魚食に移行できた個体とできなかった個体が混在する事例が知られている.主に原産地での研究から,当歳魚個体群の魚食への移行の可否は,主に3 つの要因,1)魚食移行前の成長速度,2)孵化日,3)餌魚類との産卵時期の前後関係に影響を受けると考えられる.しかしながら,当歳魚の魚食移行の決定要因について,特に導入地域における知見は乏しいため,更なる知見の集積が望まれる.

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© 2012 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
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