伊豆沼・内沼研究報告
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オオクチバスMicropterus salmoidesの繁殖生態と人工産卵床の改良
高橋 清孝藤本 泰文根元 信一芦澤 淳池田 洋二
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2014 年 8 巻 p. 1-15

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抄録

オオクチバスによる生態系への影響が深刻化した伊豆沼・内沼では,この防除のため,2000年よりオオクチバスの各成長段階に対応する総合的防除技術の開発と導入が進められてきた.沼に生息するオオクチバスを調査した結果,産卵期に大量に出現していたオオクチバス稚魚は体長20mm以上に成長すると魚食性を示し,コイ科魚類などの仔稚魚を捕食していた.そのため,沼の魚類相を復元するにはオオクチバスの繁殖抑制が不可欠と判断した.そこで,繁殖抑制を図る目的で,オオクチバスに営巣させ,産み付けられた卵を巣ごと駆除することが可能な人工産卵床の開発に取り組んだ.さまざまな形式の人工産卵床を試作して沼に設置したところ,プラスチックトレーの中に産卵基質となる直径4-5cmの砕石を入れ,トレーの側面3方にプラスチックネットの衝立を取り付けたコの字型衝立形式の人工産卵床に対し,オオクチバスは高い頻度で産卵することが確認された.そこで,この人工産卵床を用いた防除活動をボランティアの協力を得て2004年より開始した.しかし,人工産卵床に産み付けられた卵は3-4日でふ化して逸出するため,週2回の駆除作業が不可欠であった.そこで,省力化を目的とした2段式人工産卵床を開発した.これは,オオクチバスがふ化後の数日間,石の下などの間隙に潜んで発育する習性を利用し,細かい網を張ったトレーを下面に装着して2段構造とする事により,人工産卵床の砕石などでふ化した仔魚を下段のトレーで回収できるようにしたものである.この改良により,水温21℃以下であれば週1回の作業で人工産卵床の仔魚を確実に回収することが可能となり,また,1産卵床あたりの卵や仔魚の回収数も増加した.更なる省力化を図るため,ふ化仔魚を他の魚類に捕食させる構造への改良といったメンテナンスフリーを図る試験を3種類実施したが,メンテナンスフリーに繋がる成果は得られなかった.現時点では,2段式人工産卵床が作業コストや回収数の観点から最善の人工産卵床であり,この沼での防除活動に用いられている.

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© 2014 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
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