伊豆沼・内沼研究報告
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霞ヶ浦に接続する余郷入り導水路におけるイシガイ科二枚貝の生息状況:浚渫土砂からの推定
萩原 富司
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2014 年 8 巻 p. 57-66

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抄録

霞ヶ浦におけるイシガイ科二枚貝の分布に関しては,1996年における40地点の調査において,イシガイとドブガイ類の生息が報告されたが,それ以降は生息数を著しく減少させている.余郷入り導水路は,霞ヶ浦の小さな湾入部を干拓した際に,その旧湖岸線沿いをかんがい用水路として残したもので,霞ヶ浦に接続する水域の中で,近年でも二枚貝の生息が確認されていた水路の一つである.2012年に当水路において土砂堆積による浅化改善のため浚渫工事が実施され,浚渫土砂とともに多数の二枚貝が陸揚げされていたため,浚渫土砂を対象とした二枚貝の定量調査を実施した.調査の結果,調査区間3,500mのうちイシガイは上流から2,000m下流の地点を中心とした約1,000mの範囲に局在し,ドブガイ類は調査範囲全域に分布していた.数多くの二枚貝が確認されたことから,環境悪化が問題となっている霞ヶ浦と比較して,当水路は,二枚貝の生息に適した何らかの好適な環境が保たれており,霞ヶ浦のイシガイ科二枚貝個体群にとってレフュージアの機能を果たしているものと考えられた.また,浚渫土砂で表出している二枚貝を調べる手法は,既存の手法と比較して広い範囲にわたる二枚貝の生息情報を効率的に得られることがわかった.

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© 2014 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
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