証券市場においては,様々な意図を持った様々なプレイヤーの相互作用が見られるが,本稿では,特に投資家の感情に着目し,①他の投資家を意識することが投資家のネガティブな感情を変化させるか,および,②会計情報の公的開示が投資家の感情を変化させるか,という2つの仮説を,実験的に検証する。実験の結果,①他の投資家を意識することが投資家のネガティブな感情を統計的に有意に増幅させる,②会計情報の公的開示が投資家のネガティブな感情を統計的に有意に増幅させるという知見が得られた。特に後者は,会計情報の公的開示をアプリオリの前提とする現行の会計ディスクロージャー制度設計のあり方について,再考を迫るものといえる。