会計プログレス
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CO2排出量の株価説明力と情報開示の影響
阪 智香大鹿 智基
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2011 年 2011 巻 12 号 p. 1-12

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抄録

 気候変動問題は国際的な最重要課題として認識されており,京都議定書の目標を達成するためにも,温室効果ガスの削減が急務となっている。温室効果ガス削減のための各種対策は,企業に投資や費用を課し,短期的な業績を悪化させるが,一方で,排出削減やその情報開示を積極的に進める企業は将来の負担を回避できる。そこで,本研究では,売上高一単位あたりのCO2排出量に着目し,企業のCO2排出量およびCO2関連情報開示と株式時価総額の関係,さらにCO2排出量の変化と株価リターンの関係を実証的に検討した。
 分析の結果,CO2排出量が株式時価総額に対して有意な負の影響を有すること,CDPを通じた企業のCO2関連情報開示によってその負の影響が緩和されることが示された。さらに,CO2排出量が増加(減少)した企業の株価リターンが低い(高い)ことを確認した。本研究の分析結果は,企業のCO2排出効率情報とCO2関連の情報開示が投資家の意思決定に利用されていることを証拠づけており,より迅速かつ網羅的な情報開示の必要性を示唆している。

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© 2011 日本会計研究学会
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