抄録
日本の証券市場に上場している企業は,証券取引所の要請に応じて,決算短信で次期の売上高や利益についての業績予想を発表する。本研究の目的は,売上高予想から利益予想を引くことでコスト予想を取り出し,コスト予想と売上高予想との関係を利益計画や予算の観点から分析することにある。分析では,予想誤差率の平均値に注目するのではなく,管理会計領域で用いられるコスト分析技術を取り入れ,コストを売上高の関数として捉える。分析の結果,売上高の増大予想の下でのコスト増加率は過少に予想される一方,売上高の減少予想の下でのコスト減少率は過大に予想されることが発見された。これは,コストが過小に予想されることを意味し,利益予想の楽観性の原因となる。