会計プログレス
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レギュレーションFD,アナリストによる情報取得,および公共財問題
小谷 学
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2017 年 2017 巻 18 号 p. 65-79

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抄録

 アナリストは利益予測の精度を高めるために独自に情報収集活動を行っている。ところが,レギュレーションFDが施行され,情報が公共財としての性質を有するようになると,個々のアナリストは自ら情報を取得するよりも,他のアナリストの情報収集活動にただ乗りする動機を持つようになる。本稿では,複数のアナリストが費用を負担して企業から情報を取得するか否かの意思決定を行い,アナリストの行動に基づいて投資家が利益予想を行うというモデルを構築する。その結果,(1)レギュレーションFDのもとでは,アナリスト数が増えるほど,個々のアナリストは情報収集を行う動機を失い,公的情報だけに依存する傾向が強まること,(2)レギュレーションFDが施行されていない場合,アナリスト数の増加は,投資家の予測能力に対して非負の影響を与えること,(3)レギュレーションFDの下では,それが存在しない場合と比べて,投資家の予測能力は低くなること,が明らかとなった。

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© 2017 日本会計研究学会
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