会計プログレス
Online ISSN : 2435-9947
Print ISSN : 2189-6321
ISSN-L : 2189-6321
2017 巻, 18 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 「合理的検証可能性」による基礎付け
    越智 信仁
    2017 年 2017 巻 18 号 p. 1-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     金融投資におけるレベル3 公正価値測定において,最低限の信頼水準を満たさない領域に関し,会計情報の質的特性の観点から概念的掘り下げを行う。そこでは,近年における概念フレームワーク見直しの議論を踏まえつつ,測定の重要な不確実性によって「忠実な表現」が充足されない状況について,「検証可能性」概念区分の再構築(「合理的検証可能性」区分の識別)を通した基礎付けを行うとともに,IASBの「直接的」「間接的」という2 分法では「検証可能性」概念が的確に捉えられていない問題点を指摘する。こうした考察を踏まえ,「一致的検証可能性」と併せて「合理的検証可能性」が,「忠実な表現」の構成要素足り得ることにも論及する。
  • 稲葉 喜子
    2017 年 2017 巻 18 号 p. 16-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,日本企業の経営者が一般に公正妥当と認められる会計基準に違反し,いわゆる不正会計に手を染めることになった動機について実証的に検証している。検証の結果,不正会計を実施した企業はそれ以外の企業に比して財政状態及び経営成績は有意に悪化しており,資金調達ニーズは有意に高く,有意に株式の新規公開(IPO)を実施していることが明らかとなった。
  • 藻利 衣恵
    2017 年 2017 巻 18 号 p. 33-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     従業員ストック・オプションに関する主要な現行基準では,株式報酬費用について,付与時点で,財務諸表に株式報酬費用(未費消分を含む費用全額)とその相手勘定が認識されることはない。本稿は,株式報酬費用の未費消分の処理について,現在,通説となっている会計処理(付与日に未費消残高を貸借対照表に計上しない処理)の必然性を検討している。一般的に,この問題は重要である。というのも,株式報酬費用の相手勘定の貸借対照表上の貸方区分や価額が異なれば,未費消残高の額や当期の利益額が異なるためである。また,日本の先行研究でも株式報酬費用の未費消分の会計処理に関して検討を加えているものはあるが,ここではあくまで基準設定上の議論が中心となっている。この通説の論理に焦点を当て立ち入った検討を加えている先行研究としては,藻利(2012)が挙げられるが,そこでも,その通説の議論や論拠の必然性は,検討されていない。そのため,学術的な観点からこの点を検討する必要があろう。
     このようなことから,本稿では,第2 節で藻利(2012)の内容を確認したのち,第3 節では,FASBの会計処理とその論拠自体の論理必然性((1)付与日時点のESO契約で確定的なコミットメントは本当に存在しないのか,および(2)この契約に契約会計の考え方を導入しようとした場合,資産の認識だけを議論してよいのか)について,日本の会計周辺法制や契約会計の議論を用いて検討を行っている。
     ここで,本稿の結論は,以下の通りである。株式報酬費用の未費消分に関する通説(FASB1995),すなわち,権利確定前には,完全未履行契約と契約会計に基づく確定的なコミットメントがないことを理由にオンバランスしないという論理には必然性がない(確定的なコミットメントと等質であるとも解釈可能である)。
     会計基準上の通説,ならびに,與三野(2002),野口(2004)や引地(2011)では,株式報酬費用の未費消分に関する会計処理について,資産の認識要件を満たすか否かを論拠に会計処理が導出されていた。しかし,契約会計における法的拘束力を論拠として取引を計上する場合,着目されるのは,取引の借方側(資産)ではなく,取引の貸方側(負債)である。とすれば,株式報酬費用の未費消分に関する通説の論拠(資産のみの認識要件を満たすか否かにより株式報酬費用の未費消分の会計処理を決めること)自体も必然ではなく,株式報酬費用の相手勘定(負債や資本)の認識要件も含めて包括的に検討することにより,この会計処理を導出する必要がある。
  • 一行連結から測定基礎へ
    吉野 真治
    2017 年 2017 巻 18 号 p. 49-64
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     持分法会計については,これを一行連結とみる見解と測定基礎とみる見解が存在するものの,今日の制度会計においては,その位置づけが明らかにされていない。本稿の目的は,持分法会計の意義が歴史的にどのように変化してきているのかを明らかにすることである。この目的のために,本稿は,米国基準の変遷をEFRAG(2014)で示されている判断基準に照らして分析することによって,一行連結から測定基礎へと持分法会計の意義が変化してきていることを明らかにした。
  • 小谷 学
    2017 年 2017 巻 18 号 p. 65-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー
     アナリストは利益予測の精度を高めるために独自に情報収集活動を行っている。ところが,レギュレーションFDが施行され,情報が公共財としての性質を有するようになると,個々のアナリストは自ら情報を取得するよりも,他のアナリストの情報収集活動にただ乗りする動機を持つようになる。本稿では,複数のアナリストが費用を負担して企業から情報を取得するか否かの意思決定を行い,アナリストの行動に基づいて投資家が利益予想を行うというモデルを構築する。その結果,(1)レギュレーションFDのもとでは,アナリスト数が増えるほど,個々のアナリストは情報収集を行う動機を失い,公的情報だけに依存する傾向が強まること,(2)レギュレーションFDが施行されていない場合,アナリスト数の増加は,投資家の予測能力に対して非負の影響を与えること,(3)レギュレーションFDの下では,それが存在しない場合と比べて,投資家の予測能力は低くなること,が明らかとなった。
feedback
Top