本研究は並行輸入企業があるとき,多国籍企業が選択する国際移転価格の設定基準について,数理モデルをもちいて分析する。多国籍企業が自国で製造した製品を他国で販売するとき,これを購入した並行輸入企業が自国で製品を販売することがある。このとき,並行輸入企業の戦略には在外子会社の戦略をとおして多国籍企業の設定する国際移転価格が影響するため,多国籍企業の利益を考える上では,市価基準と原価基準のどちらで国際移転価格を設定すればよいかが管理会計における重要な問題となる。本研究は以上の問題を数値例により議論する。