会計プログレス
Online ISSN : 2435-9947
Print ISSN : 2189-6321
ISSN-L : 2189-6321
地方公共団体における公会計財務諸表と 地方債市場との関連性の発現過程
米国各州のデータを用いた時系列分析
原口 健太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 2019 巻 20 号 p. 16-31

詳細
抄録
 米国各州において,統一的基準に基づく公会計財務諸表の純資産情報と地方債格付との間に明確な関連性(純資産-格付関連性)が発現している一方で,日本の地方公共団体においては発現していないことが先行研究で明らかになっており,当該関連性を発現させる要因(発現要因)の解明が急務である。本稿では,解明の手がかりを得るため,統一的基準導入後,上記関連性が時間経過とともにどのように発現するか,その過程を説明する仮説の構築を目的として,米国各州における公会計財務諸表の時系列分析を行った。分析の結果,米国各州の純資産から導出した財務健全性指標である修正後正味資産比率(NAR)と地方債格付を数量化した指標(RATING)との相関係数は,時間経過とともに段階的に上昇していくことを明らかにし,純資産-格付関連性は,統一的基準導入後即時に発現するのではなく,段階的に発現するという仮説(段階的発現仮説)を構築した。当該仮説により,純資産-格付関連性の発現要因は,時系列に沿って段階的に増大するものであるという重要な手がかりを得ることができる。さらに,米国各州においては,長期間にわたるNARの変動の累積により,NARの分散が時間経過とともに段階的に増大していることから,NARの分散が発現要因の1 つである可能性を明らかにした。
著者関連情報
© 2019 日本会計研究学会
前の記事 次の記事
feedback
Top