会計プログレス
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銀行業における貸出金と 預金の時価情報の価値関連性
岡田 慎太郎
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2020 年 2020 巻 21 号 p. 46-62

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抄録

 銀行業における貸出金や預金の時価情報については,時価を売却可能価格としてその差額を評価 することはビジネスモデルとは整合せず,将来利益の関係において,保有を前提としたリスク管理 の実務が大きな影響を与えると考えられる。本研究では,このような視点に基づき,投資家は貸出金と預金の時価情報を金利変動が将来利益に与えるリスク量として用いると仮定した。結果,貸出金,預金と満期保有の債券の時価と簿価(貸出金は貸倒引当金考慮後の簿価)の差額(以下,評価差額)の純額の純額の係数は有意に負となり,当該純額とヘッジ会計の適用状況を示す変数との交差項の係数は有意に正となった。係数の符号について,投資家は現在の低金利下において,保有が前提となる貸出金と預金の評価差額の純額は,今後金利が上昇した場合に将来利益にマイナスの影響を与えると評価,ヘッジ会計の適用は当該影響の軽減が期待できることから,プラスに評価していると解釈した。一方,保有目的の異なるその他有価証券の評価差額の係数は有意に正であった。投資家は金融商品の時価情報について,保有目的により異なる取り扱いをしていることが示唆された。

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© 2020 日本会計研究学会
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