抄録
本研究は2005年から2013年までに日本の株式市場に上場している企業を対象として,経営者の在任期間と業績予想の正確度との関係を検証している。分析の結果,経営者の在任期間と業績予想の誤差との間にはU字の関係があることが確認されている。また,経営者の在任期間と業績予想の誤差との関係は経営者の年齢やコーポレートガバナンスの質に応じて変化することがわかっている。本研究の発見事項は,経営者は就任して一定期間までは自社を取り巻く経営環境や社内にある様々な経営資源に関する知識の収集に努めるため,業績予想の正確度が改善する一方で,一定期間をすぎるとエントレンチメントが支配的となり,経営者には業績予想の正確度を高めようとする動機がなくなるため,業績予想の正確度が低下することを示唆している。