抄録
事業等のリスクをはじめとする記述によるリスク情報開示は,制度導入から20 年以上が経過し,
多くの実証研究の蓄積を生んできた。本稿は,こうした研究を記述情報をどのように定量化するか(RQ1),その有用性をどのように検証するか(RQ2),の2 つの軸から文献レビューにより整理した。RQ1 については,文体,情報の類似度,記述内容の3 群に整理し,文体では多次元化,類似度では質的変化の捕捉,記述内容では自動化と,それぞれの方向で定量化手法が精緻化してきた過程を確認する。RQ2 については,リスク指標との対応関係,情報利用者による利用,リスクイベントの予測可能性,企業内部の管理体制との整合性の4 つに分類し,前二者に研究が偏り,後二者の検証は限られていることを指摘する。定量化手法の高度化が有用性検証の精緻化を可能にし,有用性検証のニーズが新たな指標の開発を促すと考えられる。今後の研究の方向性として,大規模言語モデルの活用,イベント予測・管理体制研究の拡張,日本固有の制度を活かした検証の3 点を提示する。