日本救急医学会関東地方会雑誌
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症例報告
幸帽児分娩に対して救急救命士が救急現場で破膜処置をした1例
杉田 裕一澤田 直司根本 学大河原 治平
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2020 年 41 巻 4 号 p. 500-502

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抄録

【はじめに】今回, 幸帽児に対して, 現場で破膜処置を施した症例を経験したので報告する。【症例】30代の1経産婦。妊娠36週で陣痛を訴え救急要請となった。観察開始から17分後に児が娩出されたが, 破水せず羊膜に包まれた状態であったため, 救急救命士が破膜処置を実施した。【考察】本症例について産婦人科医を交えて事後検証した結果, 卵膜が被膜したままでは新生児の死亡や高次脳機能障害を招くため, 児の救命を目的として速やかに破膜処置を行った判断および処置は適切な活動であったとされた。一方, 救急救命士に許可されている産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置はなく, 今回の活動は救急救命士法に抵触する可能性が指摘された。【結語】破膜処置が許可されていない現行の法制度では, 救急現場で娩出された幸帽児の生命が脅かされる可能性があることから, 産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置を加える検討がなされることが必要と考える。

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