日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
41 巻, 4 号
日本救急医学会関東地方会雑誌
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原著論文
  • 加藤 宏, 益子 邦洋, 関 裕, 朽方 規喜, 安藤 高夫
    2020 年 41 巻 4 号 p. 380-382
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会が到来し, 在宅医療と救急医療の連携推進が求められている。二次救急病院である当院は, 2014年12月から病院救急車を活用した患者搬送システムを運用している。出動件数は年々増え続けて, 2019年12月までに出動総件数1,874件 (在宅療養患者救急搬送523件) に達しており, 47%が慢性期病院への搬送であった。病院救急車は, 在宅医療従事者をサポートしながら高齢者を地域全体で支えるセーフティネットの役割を果たし, 急性期病院や消防救急車の負担軽減にも貢献する。加えて, 当院では, 院内多職種が協働して訪問診療にも取り組んでいる。2018年度の訪問診療件数は8,688件に達し, 525件の緊急往診に対応した。24時間救急対応可能な病院が在宅医療の一部を担うことは在宅療養支援の強化につながり, 在宅医療との相互理解や連携を深める点でも有意義である。

  • 小倉 皓一郎, 島居 傑, 栗田 健郎, 川口 留以, 安部 隆三, 中田 孝明
    2020 年 41 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【背景】Rapid response system (RRS) の目的の一つは予期せぬ心停止数を減らすことである。有効な対策を講じるためには院内心停止患者の特徴を把握する必要があるが, 入院診療科区分と院内心停止発症との関連の検討は不十分である。【対象・方法】RRSが起動された当院入院患者314名を, 内科系 (n=122), 外科系 (n=153), 循環器系 (n=39) の3群に分類した。主要評価項目としてmedical emergency team (以下 MET) 接触時の心停止, 副次評価項目として重症例 (RRS起動後のICU入室またはRRS起動後24時間以内の死亡) と28日死亡を解析した。【結果】MET接触時の心停止は, 各診療科区分の中で循環器系で最も頻度が高かった (内科系27.9%, 外科系41.2%, 循環器系53.8% ; P=0.0063) 。多変量解析でも循環器系は有意に院内心停止発症と関連した (adjusted OR 2.51, 95% CI 1.15-5.48, P=0.020) 。重症例と28日死亡の頻度は, 各診療科区分間の有意差を認めなかった。【結語】循環器系診療科区分の入院患者は予期せぬ院内心停止のリスクが高いため, さらなる予防策を講じる必要があると考えられる。

  • 松本 徹也, 手嶋 聖奈, 伊藤 花梨, 小島 啓輔, 遠藤 智美, 龍崎 亮太
    2020 年 41 巻 4 号 p. 388-391
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    本邦の救急医療システムは集中治療型・ER (Emergency Room) 型・各科相乗り型の3種類に分けられる。各科相乗り型は本邦の病院で多く見られるシステムであるが, 各科相乗り型には問題点がいくつかあり, ER型への移行が進められているとともに救急医療体制強化を行っている施設は少なくない。当院においても現在は, 従来の看護師3名に加え救急救命士4名を増員し, 救急専属の常勤医1名・救急非常勤医1名とし, 日勤帯をER型へと移行した。さらには救急委員会の開設, 空床管理の徹底等を行っている。今回, この救急医療体制の整備による効果を救急入電から治療開始までの時間経過を用いて評価し, 問題点について検討した。その結果, 入電から承諾, 治療開始に至る時間を短縮することができた。これは, 救急科のみならず他科の医師による時間短縮によるものが大きかった。一方, 空床管理等の必要性も再認識させられた。救急医療の円滑化には, ER型の導入, 各種問題点を討議する救急委員会等の設置などによる救急医療に対する病院全体の意識の向上の重要性が示唆された。

  • 宮崎 百代, 小林 憲太郎, 山本 真貴子, 松田 航, 廣瀬 恵佳, 植村 樹, 佐々木 亮, 木村 昭夫
    2020 年 41 巻 4 号 p. 392-395
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    脂肪吸引術は, 体形の美容的改善を目的とした保険外診療である。手術は全身麻酔下で小さな切開孔から盲目的に広範囲の脂肪吸引を行う。外来手術で行われる症例が多いが, 時に術後当日に救急搬送を要する患者が発生し, 救急部門でその合併症治療に迫られることがある。今回われわれは, そのような患者の実態調査と他院保険外診療による合併症患者の診療請求のあり方を後方視的に検討した。2年半の間に該当症例は4症例であり, 全患者が入院診療を必要とした。半数は輸血を要するほどの貧血を呈していた。また併発した合併症に対し手術療法が必要となった症例もあった。当院当科では, 事務部門と協議し, 東京保険医協会のコメントをもとに保険診療としたが, 診療費は多額になる症例もあり, 保険診療とすることで公的医療費の負担が増すことを考えると, 手術した施設に支払いを請求するなど他の対策も講じる必要がある。

  • 嶽間澤 昌泰, 問田 千晶, 六車 崇, 篠原 真史, 竹内 一郎
    2020 年 41 巻 4 号 p. 396-399
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究は日本救急医学会多施設共同院外心停止レジストリ解析用データ (N=13,491) のうち, 17歳以下の小児内因性心停止例を対象に, 神経学的転帰良好例の特徴を後方視的に検証した。対象173例で自己心拍再開44例 (25%), 1カ月後生存23例 (13%), 神経学的転帰良好13例 (8%) であった。神経学的転帰良好群 (N=13) と不良群 (N=160) で2群比較を行った。不良群と比べ良好群は, 高年齢で心原性, 目撃あり, 病院前初期波形 心室細動/無脈性心室頻拍が多かった。病院到着時, 自己心拍再開率が高く, 初期波形 心静止が少なかった。搬入時血液検査はpH, PaO2, SaO2, HCO3-, BEが高く, PaCO2, 乳酸値, カリウム値が低かった。アドレナリン投与率が低く, マグネシウム投与率が高かった。今後は, 症例を蓄積し, 年齢層別に解析することが課題である。

  • 迫田 典子, 大西 真裕, 池田 尚人, 小菅 宇之
    2020 年 41 巻 4 号 p. 400-402
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    一次救命処置コース受講2年後と4年後のCPRスキル推移と維持に対する意識の変化について, 客観的評価指標と短答式質問紙調査により明らかにした。BLS受講後4年間のCPRスキルの低下は認められなかった。BLS受講2年後まではCPRの質に対する意識が高く, それ以降は, CPRの質を自己評価し, スキル維持への行動に変化していることが明らかになった。正しいCPRスキルの習得が, スキル維持にも影響を及ぼしていたため, 定期的なスキル評価の必要性を再認識する結果となった。

  • 戸塚 武美, 藤田 桂史, 吉田 光汰, 橋本 和賢, 飯田 幸英
    2020 年 41 巻 4 号 p. 403-406
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    われわれは先行研究において雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育が, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対する救急隊の病院選定的確率を改善させる可能性を報告した。

    救急隊に広く普及しているシンシナティ病院前脳卒中スケール (Cincinnati Prehospital Stroke Scale ; CPSS) は, 脳局所症状を判断するものであり, 脳卒中で最も危険といわれるくも膜下出血では該当しない症例がある。また, くも膜下出血の典型的な症状である「突然の激しい頭痛」は客観性に乏しく, 救急隊が判断に迷う一因となっている。この対策として, 吐気, 意識消失, めまいなどの症例では必ず頭痛の有無を確認し, 頭痛を訴えた場合には雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取を行うよう教育に取り組んだところ, 頭痛情報聴取率は統計学的に有意に改善し, 病院選定的確率は改善傾向を認めた。

    雷鳴頭痛の概念を踏まえた情報聴取教育は, 神経学的所見に乏しい出血性脳卒中に対し, 的確な病院選定を行う一助となり得る。

症例報告
  • 中村 元保, 加藤 晶人, 井上 元, 鈴木 恵輔, 中島 靖浩, 前田 敦雄, 森川 健太郎, 八木 正晴, 土肥 謙二
    2020 年 41 巻 4 号 p. 407-410
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は89歳の女性。身長147cm, 体重43kgと小柄で慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD) の既往歴がある。1カ月前から呼吸困難を自覚していた。朝に呼吸困難が増強したためにツロブテロールテープ2mgを1枚胸部に貼付したが, 症状改善ないために夕方に2枚目を胸部に追加貼付した。追加貼付2時間後から動悸, 嘔気を自覚したために救急要請した。救急隊到着時は意識レベルJCS1であったが, 嘔吐が出現し意識レベルJCS100まで低下し当院へ救急搬送された。搬送時意識障害は改善傾向であり, 胸部に貼付されていたツロブテロールテープ2枚を剝離したところ動悸と嘔気が消失した。臨床症状よりツロブテロールテープによる中毒症状が疑われた。貼付薬は容易に自己調整できるが, 高齢者や乳幼児など管理能力に問題がある場合や, 低体重の症例では使用方法に注意が必要となる。また, 救急対応の際には全身観察での貼付薬の有無の確認も必要となってくる。

  • 藤井 裕人, 古谷 良輔, 宮崎 弘志
    2020 年 41 巻 4 号 p. 411-414
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    洗濯用パック型液体洗剤 (以下LDP), いわゆるジェルボールは2014年に日本で発売が開始された。われわれはLDPを誤飲した認知症を有する高齢患者の症例を経験した。86歳の男性。自宅で嘔吐と下痢をしていたため医療機関に搬送された。胃管を挿入すると泡立つ排液が吸引され, 洗剤の香りを認めたため洗剤誤飲と診断された。加療目的で当救命センターへ搬送された。家族の話から自宅にあったLDPを誤飲したことが判明した。来院時は肺炎, 急性腎障害, 脱水を認めた。酸素投与, 補液, 肺炎に対して抗菌薬の投与を行った。27日間の入院加療後に自宅へ退院となった。海外においては認知症患者のLDP誤飲による死亡事故が発生しているが, 日本では認知症患者のLDP誤飲に対する危険性の認識は乏しい。医療従事者はその危険性を認識するべきである。また, 認知症患者の介護者に対しての情報提供が必要である。

  • 小松 勇史朗, 本間 洋輔, 木村 隆治, 小川 敦裕, 石上 雄一郎, 沼田 賢治, 溝辺 倫子, 高橋 仁, 井上 哲也, 舩越 拓
    2020 年 41 巻 4 号 p. 415-417
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【背景】重症肺血栓塞栓症は致死的疾患であり早期介入が重要である。【症例】とくに既往のない58歳女性。長時間の自動車への乗車後, 玄関で倒れているところを発見され救急要請となった。来院時, ショックバイタルであった。身体所見, 心電図, 経胸壁心臓超音波検査から肺血栓塞栓症による閉塞性ショックを強く疑った。来院後20分で心肺停止となり直ちに二次心肺蘇生を開始しつつ, 静脈脱血-動脈送血膜型人工肺 (extracorporeal membrane oxygenation ; V-A ECMO) の導入を開始した。心肺停止から21分後で体外循環を確立し, 胸部造影CTで広範型肺血栓塞栓症の診断となった。診断後抗凝固療法を開始し, ICU管理となった。その後臨床経過は良好であり入院21日目に神経学的後遺症なく退院となった。【結語】病歴や身体診察, 心電図, 心臓超音波検査の所見を総合的に考え, 早期に肺血栓症を疑いVA-ECMO導入を開始したことが予後良好な救命につながったと考えられた。

  • 今村 友典, 小松 祐美, 毛利 晃大, 金井 尚之
    2020 年 41 巻 4 号 p. 418-421
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腹直筋血腫は上・下腹壁動静脈や腹直筋線維の破綻により腹壁に血腫が生じる比較的まれな疾患である。発症には外傷のほか, 抗血栓症薬の使用や加齢, 咳嗽等の関与が指摘されている。【症例】77歳の男性で心房細動, 脳梗塞, 狭心症に対し抗血栓症薬の内服を行っていた。就寝中に咳嗽が出現した後から右側腹部痛と腹部腫瘤を自覚し当院へ救急搬送された。来院時, 意識は清明でバイタルサインは安定していた。身体所見では右上腹部に腫瘤性病変と皮下出血痕を認めていた。造影CTで右腹直筋に造影剤の漏出を認めたが保存的加療を選択し, 症状の増悪なく経過して第6病日に軽快退院した。【考察】抗血栓療法中に突然生じる腹部症状のなかには, まれながら本疾患も考慮する必要がある。また, 腹直筋はその解剖学的特徴から上腹部では前鞘だけでなく後鞘, 腱画が存在するため, 造影剤の漏出があっても保存的に加療できる可能性がある。

  • 大谷 圭, 北村 拓也, 武田 聡
    2020 年 41 巻 4 号 p. 422-425
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【症例】35歳, 女性。【現病歴】約1カ月の経過で腹痛を自覚していた。前医では経過観察となっていたが当院受診の前日から症状が増悪し受診となった。【経過】痛みは間欠的であり移動性であったこと, 軽度の下痢症状を合併していたことから, 当初は急性腸炎と診断した。しかし腹部超音波検査にて肝彎曲部にTarget signを認めたこととMRIにて囊胞性腫瘍による腸重積の診断となった。本症例は厳重な入院管理治療が必要と判断され, 当大学附属病院に転送された。搬送後は高圧浣腸にて腸重積は解除された。その1カ月後に虫垂粘液腺腫切除を目的とした盲腸切除術を行い, 現在は母児ともに健康である。【考察】妊婦の急性腹症は診断に苦慮することが多いが, なかでも腫瘍が原因となる腸重積はまれな疾患である。妊婦の救急受診に際しては, 侵襲の少ない検査を併用することで母児ともに安全を図ることが重要と考えられた。

  • 杉中 宏司
    2020 年 41 巻 4 号 p. 426-429
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    今回われわれは, 会陰の腫脹・発赤・疼痛を主訴に救急搬送され, 会陰部膿瘍に活動性の肺結核を合併していた症例を経験した。症例は, 28歳, 男性。2日前からの会陰部の痛みと腫脹で救急搬送された。来院時, 会陰部にゴルフボール大の発赤・腫脹を認める以外全身状態は安定していた。体幹部造影CTにて, 右肺上葉に小結節や空洞形成, 会陰部に膿瘍形成を認めた。胃液の抗酸菌塗抹検査で陽性であり, 肺結核を合併した会陰部膿瘍の可能性を考えた。同日緊急手術となり, 喀痰の抗酸菌塗抹検査, PCRも結核陽性となったため活動性肺結核の診断となった。会陰部膿瘍からは, 細菌と結核菌群が検出された。本症例は, もともと無自覚の肺結核, 結核性皮下膿瘍が存在し, 膿瘍に細菌感染したため急激に発赤, 腫脹, 疼痛が出現したと考えた。結核はさまざまな症状があり, 主症状だけでは活動性肺結核の判断が困難である。外来での診察では常に結核を念頭に置く必要がある。

  • 曽 充人, 岩崎 任, 土屋 真貴子, 服部 賢治, 堀江 勝博, 一二三 亨, 大谷 典生, 石松 伸一
    2020 年 41 巻 4 号 p. 430-433
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    特記既往歴のない69歳男性。右胸痛・呼吸苦を主訴に救急搬送された。来院時, 血圧低下と高度低酸素血症, 胸部CT画像で右下肺に広範囲に広がる肺炎像を認め, 挿管のうえ, 集中治療室入室となった。第12病日の胸部CT画像で膿胸を疑う右胸水の分布を認め, 超音波検査でフィブリン塊とフィブリン線維を疑う像を認めたが, 培養結果が陰性であったためドレナージなどの介入はしなかった。第29病日に再検した胸部CT画像で膿胸を強く疑う所見を認め, 胸腔ドレーン挿入・ウロキナーゼ投与を試みたが奏功せず, 第35病日に外科的介入を試みるも, すでに器質化しており除去できなかった。超音波検査でフィブリン塊とフィブリン線維を疑う所見を確認した時点で, 介入する判断をし, その後の外科的介入を避けられた可能性がある。頻回のCT撮影が困難な患者において, ベッドサイドで簡便にできる超音波検査でフィブリン線維の出現を認知することで, より早期に介入の判断が可能になると考えられた。

  • 塩村 美帆, 竹本 正明, 宮崎 真奈美, 広海 亮, 浅賀 知也
    2020 年 41 巻 4 号 p. 434-437
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    80歳男性。主訴は胸水貯留。1年半前から労作時息切れ, 下腿浮腫を認め, 完全房室ブロックに伴う心不全と当院循環器内科でペースメーカー植込み等を施行された。しかし胸水貯留を繰り返すため当科に紹介入院精査となった。全身性浮腫, CT上は胸腹水貯留と縦隔リンパ節の腫大, 採血では汎血球減少とCRPの上昇を認めた。TAFRO症候群等を疑い精査を開始したが, 呼吸状態が悪化したため, 第6病日にICU入室, 人工呼吸開始となった。確定診断前ではあったがステロイドパルスを施行したところ, 胸水減少および呼吸状態の改善がみられた。第20病日に人工呼吸器を離脱し, 第24病日ICU退室となった。本症例は難治性胸水とリンパ節腫大, 血球減少よりTAFRO症候群を疑い, ステロイドによる治療を開始して改善が得られた。難治性胸腹水にリンパ節腫大, 血球減少を認めた場合は上記疾患も念頭に置き, 診断された際にはステロイドによる治療を検討すべきと考えた。

  • 鈴木 源, 坪井 基浩, 川浦 洋征, 勅使河原 勝伸, 五木田 昌士, 田口 茂正, 清田 和也
    2020 年 41 巻 4 号 p. 438-441
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【症例1】63歳男性。 階段から転落し受傷した右肋骨多発骨折, 右血気胸に対し, 透視ガイド下に胸腔ドレーンを留置したが, 血性排液が持続した。翌日の造影CTで胸腔ドレーンに沿って血管外漏出像を認めた。血管造影検査では外側胸動脈が責任血管であり, ゼラチンスポンジで動脈塞栓術 (TAE) を行い止血した。【症例2】69歳女性。 重症急性膵炎・ARDSの治療中に胸腔穿刺を実施したところ刺入部より出血を認めた。造影CTで刺入ルート上に仮性動脈瘤を疑う造影効果を認めた。血管撮影検査で外側胸動脈の分枝に認めた仮性動脈瘤をn-butyl-2-cyanoacrylateでTAEを行い止血した。【考察】胸腔ドレーン挿入時の合併症としての外側胸動脈損傷はまれである。大胸筋近傍では外側胸動脈が走行するためBritish Thoracic Societyのガイドラインが推奨する`safety triangle’での挿入でも損傷をきたす可能性がある。出血部位の同定は造影CTでは難しく血管造影検査が必要であり, 確実な止血のためにはTAEが有効であると考えられた。

  • 加藤 史人, 佐々木 亮, 小林 憲太郎, 植村 樹, 松田 航, 廣瀬 恵佳, 山本 真貴子, 大竹 成明, 柴崎 貴俊, 木村 昭夫
    2020 年 41 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    メシル酸ナファモスタット (nafamostat mesylate ; NM) に対するアレルギー反応にて心停止に至る報告はまれである。複数回NMを用いた血液透析歴のある患者が, 透析開始直後に心停止となり, その原因としてNMによるアナフィラキシーが疑われた1例を報告する。症例は糖尿病性腎症で維持透析中の70歳男性。大腿骨頸部骨折の診断で入院し, 入院後にNMを用いて複数回透析を施行したが問題なく経過した。第20病日, 人工骨頭置換術翌日の透析開始直後に心停止に至った。皮膚所見は認めず, ほかにショックの原因となり得る病態も考えられたため, 心停止の原因としてアナフィラキシーとは断定できなかった。第22病日にNMを用いた持続的血液ろ過透析開始直後に意識消失, 血圧低下, 全身発赤を認め, この時点でアナフィラキシーと判断した。NMを用いた透析において, 過去にNMを安全に使用できている状況や皮膚所見がない状況でも常にNMによるアナフィラキシーは念頭に置く必要がある。

  • 富山 幸一郎, 大竹 成明, 滝井 健人, 佐々木 亮, 柴崎 貴俊, 山本 真貴子, 廣瀬 恵佳, 松田 航, 植村 樹, 小林 憲太郎, ...
    2020 年 41 巻 4 号 p. 447-451
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    超難治性てんかん重積状態は, 全身麻酔薬によっても抑制されず, 24時間以上持続する状態であり, 発生率は少ないが死亡率も高く予後不良である。今回われわれは超難治性てんかん重積状態で長期にわたり全身の臓器障害に対する集中治療を要した1例を経験したので報告する。患者は56歳男性。先行する発熱と痙攣発作で当院救急搬送された。来院後痙攣発作をきたし気管挿管, 集中治療を施行し, てんかんコントロール目的に入院となった。10種類の抗けいれん薬を必要とし, てんかんのコントロールに難渋した。また急性腎不全や敗血症などの合併症に対して集中治療も長期間必要としたが, 第123病日には指示入力可能となるまで回復した。

    超難治性てんかん重積状態は, てんかんのコントロールに難渋するため専門的な薬剤の知識などを必要とし, 合併する臓器障害に対して集中治療を長期間必要とするため, 診療には神経内科と救急科・集中治療科の集学的な協力体制が不可欠と考える。

  • 横田 美帆, 海老原 貴之, 谷口 慎一, 鈴木 涼平, 田村 洋行, 天笠 俊介, 柏浦 正広, 千々和 剛, 下山 哲, 守谷 俊
    2020 年 41 巻 4 号 p. 452-457
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    軽微な外傷でチャンス骨折を生じ, 遅発性神経麻痺に至った2例を経験した。2症例の共通点は, 後期高齢者であること, 転倒による軽微な外傷が受傷機転であること, びまん性特発性骨増殖症 (diffuse idiopathic skeletal hyperostosis ; DISH) を伴っていることであった。DISHを伴う脊椎骨折は初期診断が不正確になりやすく保存治療で骨癒合が得られにくいため, 遅発性神経麻痺が出現する傾向がある。転倒による腰背部痛では第一に圧迫骨折を疑うが, DISHを伴った高齢者では, 軽微な外傷でも破裂骨折やチャンス骨折の可能性を常に考える必要がある。診断の遅れや手術待機期間の長期化は遅発性神経麻痺発生リスクとなる。わが国では超高齢者のさらなる増加が予想され, 同様の経過をたどる症例が増加する可能性があり救急医にも慎重な対応が求められる。

  • 曽我 太三, 櫻井 馨士, 安岡 尭之, 松島 純也, 坪内 陽平, 金指 秀明, 山本 理絵, 秋枝 一基
    2020 年 41 巻 4 号 p. 458-461
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    われわれは, 致死的多発外傷に対しハイブリッド手術室を用いて治療し救命し得た1例を経験したので報告する。症例は54歳の男性。自転車走行中に2tトラックと衝突し受傷した。当院搬送時は血圧低下, 意識障害を呈しており, 大動脈内バルーン遮断後に全身CTで外傷性胸部大動脈損傷, 外傷性血気胸, 腹腔内出血を伴う脾損傷, 不安定型骨盤骨折などの損傷を認めた。ハイブリッド⼿術室で緊急開腹を行った後, 脾損傷に対する塞栓術で止血を得た。術後は合併症なく経過し第52病日に独歩での自宅退院となった。出血性ショック症例に対する脾温存に関しては慎重に適応を判断する必要があるが, ハイブリッド手術室での開腹術と血管内治療への迅速な移行により救命できたと考えられた。

  • 塩地 祐貴, 伊藤 敏孝, 杉浦 潤, 金澤 将史, 杉村 真美子, 中野 貴明
    2020 年 41 巻 4 号 p. 462-465
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は, 87歳男性。突然の呼吸困難, SpO2低下を呈し救急搬送された。血圧は保たれていたが, SpO2は15L酸素投与で90%と低下していた。胸部CT画像で右胸腔に大量の胸水とガス貯留を認め, 縦隔は左側へ圧排されていた。CT帰室後に血圧が低下したため緊張性気胸を考慮し右胸腔ドレナージを施行したところ, 悪臭の強い膿液が高圧で噴出した。一旦血圧は上昇するも, 再度の血圧低下と意識状態の悪化を認め, 膿胸, 敗血症性ショックの診断でメロペネム, クリンダマイシンを投与し入院とした。入院後に胸水培養より嫌気性菌でBacteroides属菌, Peptostreptococcus 属菌が検出された。齲歯, 歯周炎からの感染と考え抗菌薬投与を継続し, 症状改善して115日目に施設転院となった。本症例は嫌気性菌よるガス産生が引き起こした亜急性の閉塞性ショックと敗血症性ショックを合併した症例であった。このような病態では, 初療より嫌気性菌に対応した治療を施行していく必要があると考えられる。

  • 松下 俊介, 関根 良介
    2020 年 41 巻 4 号 p. 466-469
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は25歳男性。金属加工工場での作業中に回転体に接触して約10%の背部 III 度熱傷を受傷した。まずは洗浄と軟膏塗布による保存治療を継続した。demarcationがある程度定まったところで, ポケット形成や骨露出部位があったため, 分層植皮術前にwound bed preparation目的に局所陰圧閉鎖療法を併用したところ, 良好な肉芽形成を得られ, ポケットの閉鎖や骨露出面積の減少という効果も得られた。その後, 分層植皮術を施行し, 植皮片の生着が非常に良好であった。本症例は局所陰圧閉鎖療法によってwound bed preparationがなされたため植皮片の生着が良好であったと考えられる。

  • 森内 麻美, 北野 夕佳, 岩井 俊介, 栗栖 美由希, 堤 健, 若竹 春明, 吉田 徹, 桝井 良裕, 小竹 徹, 村澤 昌, 白井 小 ...
    2020 年 41 巻 4 号 p. 470-474
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    44歳男性。来院1カ月前に高血圧を指摘されたが降圧薬服用せず。頭痛主訴に来院し, 意識障害, 腎機能障害, 血小板減少, 高度な高血圧があり, 高血圧緊急症として点滴持続静注で降圧を開始した。眼底所見を伴い, 高血圧緊急症の中でも予後不良の悪性高血圧症であった。破砕赤血球は認めなかったが溶血の所見と血小板減少あり, 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) も否定できない血栓性微小血管障害症 (TMA) として血漿交換を施行した。頭部MRIでは可逆性後部白質脳症 (PRES) の所見があった。降圧治療で意識レベル・頭痛はいったん改善するも, 一過性の過降圧で傾眠状態となり, 血圧上昇に伴い改善した。ADAMTS13活性の低下はなく, 降圧治療で意識障害・溶血所見は改善したため, 悪性高血圧症による二次性TMAと判断した。悪性高血圧症では降圧が治療であるが過降圧から意識障害増悪をきたし得ること, TTPとの鑑別が困難で血漿交換を選択する症例があることに留意する必要がある。

  • 谷口 枝穗, 増澤 佑哉, 島谷 直孝, 多村 知剛, 上野 浩一, 栗原 智宏, 本間 康一郎, 佐々木 淳一, 田口 寛子, 新庄 正宜 ...
    2020 年 41 巻 4 号 p. 475-478
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【背景】今回, 水痘を罹患した後に脳梗塞を発症した小児の1例を経験したので報告する。【症例】4歳の男児。右上下肢脱力で当院へ救急搬送された。来院後, 救急外来で一過性の右上下肢麻痺および構音障害が確認された。頭部MRI検査拡散強調画像で左内包後脚に高信号域, MRA検査で左中大脳動脈本幹の血管狭小所見を認め急性期脳梗塞と診断し, 同日入院した。入院5週間前に水痘罹患歴があり, 入院時の髄液検査より水痘・帯状庖疹ウイルス (varicella zoster virus : VZV) DNAが検出され, 水痘罹患後の血管炎による脳梗塞と診断した。アシクロビル (Aciclovir : ACV), プレドニゾロン (Prednisolone : PSL), 抗血栓薬投与により症状は単相性に改善し, 第18病日に自宅退院となった。【考察】小児期の脳梗塞の原因は, 成人と比較し多岐に渡り, 水痘罹患も主要な原因の一つである。小児脳梗塞症例においては, 基礎疾患の検索のほか, 水痘をはじめとした感染症の罹患歴ももれなく聴取することが重要である。

  • 上石 稜, 畠山 淳司, 多賀 匠, 本間 佐和子, 室谷 直樹, 山本 太平, 小林 祐介, 藤沢 篤夫, 渡瀬 瑛, 太田 慧, 鈴木 ...
    2020 年 41 巻 4 号 p. 479-482
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性, 特記すべき既往はない。突然の心窩部痛と嘔吐にて当院救急搬送され, 特発性急性重症膵炎の診断で入院した。その後, 多臓器不全のためICU入室し, 抗菌薬加療, 持続腎代替療法など全身管理を行った。第29病日に感染性膵壊死による敗血症性ショックをきたし, 左前腎傍腔と骨盤腔膿瘍に対して超音波ガイド下経皮的ドレナージ術を施行した。経過とともにドレナージチューブのサイズアップを適宜行ったが, ときに洗浄不良をきたしドレナージに難渋した。皮膚トラブルもみられており, 膿瘍のドレナージ不良, 長期留置カテーテルの血流感染症による敗血症から多臓器不全のため第78病日に死亡退院した。感染性膵壊死の治療戦略としてStep-up approachが提唱されているが, インターベンションの具体的な方法, ネクロセクトミーへの移行時期など不明な点が多く, 今後の症例蓄積が必要である。

  • 大谷 義孝, 坂本 真希, 野村 侑史, 高平 修二, 根本 学
    2020 年 41 巻 4 号 p. 483-485
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【症例】60歳台の男性。人間ドックでバリウム検査後, 下剤の服用を怠った。翌日, 腹痛が出現したため近医を受診し, 浣腸後に腹痛が増悪し, 消化管穿孔が疑われ当院に紹介された。来院時, 腹部全体に筋性防御がみられた。バリウム滞留に浣腸を施行したことによる消化管穿孔と診断し, 同日, 緊急開腹術を実施した。腹腔内は多量の便汁およびバリウムによる汚染が高度であった。腹腔内を大量の生理食塩液で洗浄した後, Hartmann手術を施行した。腸管浮腫が著明であったため閉腹せずopen abdomen managementとし, 後日閉腹した。腹腔内膿瘍を続発したため穿刺吸引ドレナージと抗菌薬投与を継続し, 第109病日に自宅退院した。【考察】バリウム検査後の消化管穿孔は, 頻度は高くないが, 発症すると高度の炎症を伴い, 治療に難渋することが多い。バリウム検査後の便秘症に対し安易な浣腸の施行は控えるべきである。

  • ヤマカワ 詩央, 山形 梨里子, 福山 唯太, 沼田 賢治, 本間 洋輔, 溝辺 倫子, 高橋 仁, 井上 哲也, 舩越 拓
    2020 年 41 巻 4 号 p. 486-488
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    真珠腫性中耳炎は骨破壊を伴いながら中耳外に進展し, 内耳まで波及した場合はめまいや感音難聴をきたすことが知られている。症例は脳梗塞・糖尿病・高血圧の既往がある65歳男性。来院15日前に末梢性めまい症の精査, 加療目的で入院, 真珠腫性中耳炎が診断されていた。退院後に待機的に手術を行う方針で当院耳鼻咽喉科外来に受診していたが, 退院翌日から間欠的に悪寒戦慄が出現したため, 退院10日後に当院救急外来 (ER) を受診した。受診時体温39.6℃, 呼吸数28回, 齲歯・右外耳道炎・右中耳炎を認めた。齲歯や中耳炎に伴う頭頸部膿瘍形成を考え, 頭頸部造影CTを撮像したところ, 頭蓋内に空気迷入を認めた。右感染性真珠腫性中耳炎・気脳症の診断で, 手術目的に他院へ紹介搬送し, 他院にて待機的に鼓室形成術を施行し良好な経過を得た。末梢性めまいでERを受診する患者の中には真珠腫性中耳炎の症例があり重症化することがある。

  • 和泉 亥織, 金澤 将史, 中野 貴明, 杉浦 潤, 杉村 真美子, 伊藤 敏孝
    2020 年 41 巻 4 号 p. 489-492
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    今回, 非穿孔性急性虫垂炎に伴う敗血症性ショックをきたした1例を経験した。症例は56歳女性で既往歴には潰瘍性大腸炎, うつ病があった。当院来院2日前に心窩部痛で前医を受診し機能性ディスペプシアの診断で経過観察となっていた。その後も症状は持続し右下腹部痛や発熱も出現したため前医に救急搬送され急性虫垂炎と診断された。白血球数が1,100/µLであり緊急手術適応と考えられ当院へ転院となった。CT画像では穿孔を示唆する所見は認めなかったがCT検査後に収縮期血圧が70mmHgに低下したため, 昇圧薬および抗菌薬投与を開始し緊急で腹腔鏡下虫垂切除術が施行された。術中所見は虫垂に穿孔を認めず, 病理診断は壊疽性虫垂炎であった。術後経過は良好で第12病日には退院した。非穿孔性急性虫垂炎であっても敗血症性ショックに陥る可能性を念頭に置くべきである。

  • 前島 璃子, 大元 文香, 金谷 貴大, 溝渕 大騎, 石井 浩統, 恩田 秀賢, 増野 智彦, 小笠原 智子, 新井 正徳, 辻井 厚子, ...
    2020 年 41 巻 4 号 p. 493-495
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    バルプロ酸ナトリウムは抗てんかん薬として多用される薬剤であり, その副作用も多岐にわたる。今回われわれはバルプロ酸ナトリウム投与中に腹痛・発熱を主訴として受診し, 重症急性膵炎の診断に至った1例を経験した。副作用として膵炎の頻度は多くないものの, 壊死性膵炎や死亡例の報告もあり, 早期診断と治療が求められる。バルプロ酸ナトリウム投与症例において, 腹痛や発熱をきたした場合, 急性膵炎の可能性を念頭において診療にあたる必要がある。

  • 加藤 智之, 大井 真里奈, 丸橋 孝昭, 中谷 研斗, 栗原 祐太朗, 片岡 祐一, 浅利 靖
    2020 年 41 巻 4 号 p. 496-499
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    胃蜂窩織炎は胃全層における化膿性炎症性病変で, 義歯誤飲を契機に発症した報告はこれまでない。症例は81歳男性。交通外傷で当院に搬送され骨盤骨折の診断で入院となった。第6病日に義歯欠損が発見され, 胸部X線で胃内に義歯を認めた。CTで胃穹窿部の壁内ガス, 門脈ガスの所見があり, 上部消化管内視鏡検査では胃大彎の炎症性変化が認められ, 同部位に義歯が突き刺さった状態であり, 摘出した。胃粘膜培養からKlebsiella pneumoniae, Escherichia coliが検出され胃蜂窩織炎の診断となり, 禁食・抗菌薬投与による保存的治療でCT所見は改善し, 治癒した。本症例は義歯誤飲を契機に胃蜂窩織炎を発症したと考えられた。

  • 杉田 裕一, 澤田 直司, 根本 学, 大河原 治平
    2020 年 41 巻 4 号 p. 500-502
    発行日: 2020/12/28
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル フリー

    【はじめに】今回, 幸帽児に対して, 現場で破膜処置を施した症例を経験したので報告する。【症例】30代の1経産婦。妊娠36週で陣痛を訴え救急要請となった。観察開始から17分後に児が娩出されたが, 破水せず羊膜に包まれた状態であったため, 救急救命士が破膜処置を実施した。【考察】本症例について産婦人科医を交えて事後検証した結果, 卵膜が被膜したままでは新生児の死亡や高次脳機能障害を招くため, 児の救命を目的として速やかに破膜処置を行った判断および処置は適切な活動であったとされた。一方, 救急救命士に許可されている産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置はなく, 今回の活動は救急救命士法に抵触する可能性が指摘された。【結語】破膜処置が許可されていない現行の法制度では, 救急現場で娩出された幸帽児の生命が脅かされる可能性があることから, 産婦人科領域の救急救命処置に破膜処置を加える検討がなされることが必要と考える。

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