日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
症例報告
アンギオテンシンII受容体拮抗薬内服中で, 旅行者下痢症による高度脱水から重篤な急性腎障害をきたした1例
北野 夕佳若竹 春明堤 健吉田 稔吉田 徹桝井 良裕村澤 昌中薗 健一平 泰彦藤谷 茂樹
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2021 年 42 巻 3 号 p. 79-82

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抄録

【背景】アンギオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) などのレニンアンギオテンシン (RA) 系阻害薬は心・腎保護作用の観点から処方頻度が高い。発熱, 下痢, 嘔吐, 経口摂取低下などのシックデイには, 急性腎障害 (AKI) のリスクがありレニン・アンジオテンシンン (RA) 系阻害薬は休薬を指導することが日本腎臓学会からも提唱されているが, 周知度は高くない。【症例】70歳台男性。腎硬化症によるChronic kidney disease (CKD) G3aでオルメサルタン, アムロジピン処方あり。カンボジア観光旅行に行き, 約8回/日の水様下痢が出現するも, ARBを含め内服を継続した。帰国後体重7kg減と嘔気にて近医を受診しCr 9.8mg/dLを指摘され当院に紹介入院となった。乏尿でありCrは13.4mg/dLまで上昇したが, 補液, ARB休薬にて自尿は回復した。腎機能もCr2.9mg/dLまで改善したため第9病日自宅退院した。旅行者下痢症からの脱水症およびARBによるacute on chronic kidney diseaseと考えられた。【結語】シックデイにはRA系阻害薬を休薬することが重要である。

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